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10年の変化

年末にダウンタウン周辺を散策し、改めてシアトルに起きた変化を実感した。ウォーターフロントを走っていた高架道路はなく、レイクユニオンのオフィス街を歩行者が忙しく行き来する。若々しい街の中で、遠く見えるレーニエ山がいつまでも同じ懐かしさを醸し出していた。

シアトル・タイムズ紙の年末記事で2010年代に起きたシアトル市の人口変化が示されていた。同紙が挙げた5大変化は人口、生活費、イーストサイドの人口多様化、職業、ミレニアル世代になるという。

100年あまりで見る当地の人口動向は興味深い。1900年代初めのゴールドラッシュ。40年代から始まったボーイングブーム。その後のボーイング不況を経て、80年代後半からマイクロソフトブーム。そして今2010年以降はアマゾンブームとなる。

ワシントン州外からシアトルへの移住者は、近年で毎年約5万人になるとされる。街を離れる人数もあり、2010年以降の人口は13万6千人増。その前の30年での増加数は11万6千人だったことから大きさが分かる。昨年までに人口74万5千人に達し、10年で22%増となった。同紙によると、この10年は主要都市で全米一の成長速度を見せたという。

人種層の移り変わりも興味深い。シアトルの多様化はいわゆる非白人の比率で34%から37%とわずかに進んだだけだが、イーストサイドなどの数字は跳ね上がる。記事によると、ベルビューは2010年の34%から51%と過半数を超えた。2018年の数字ではフェデラルウェイ60%、レントン58%、ケント55%、レドモンド52%という。

労働統計局によると、ソフトウェア開発を職業とする人数はシアトル地域で6万6千人近くになり、小売業を上回り最大層になった。このソフトウェア開発業の年収中間値は12万5千ドルだそうで、世帯年収の中間値は9万3500ドルと2010年から3万3000ドル跳ね上がった。サンフランシスコとサンノゼの2都市に次ぐという。

何よりも若返りを示すのが、ミレニアル層にあたる25歳から39歳の人口。2018年のシアトル市内で24万人に達し、2010年から7万人近く増えた。市民年齢の中間値を1歳下げたという。

次の10年はどのような変化がもたらされるだろうか。

          (佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。