天寿司の寿司カウンターに座るといつも笑顔で出迎えてくれるのが高橋慎一郎さん。「毎日店に出て働いています。お客様と顔を合わせるのは楽しいし、今はこの仕事が楽しすぎて仕事をしている感覚がないです」と本人が話す通り、クイーンアンの店を訪れれば高橋さんに会わないことがない。
福島県会津若松出身の高橋さんが寿司ビジネスに飛び込んだのは高校卒業直後の18歳。以来、25年に渡る寿司人生だ。きっかけは、1990年代後半当時に世界進出を急展開していた元気寿司でのアルバイト。すぐに社員になった高橋さんは、店長、そしてエリア・マネジャーに抜擢され、数年後には香港や台湾などの店舗を任されるようになった。シアトル地域への進出を任されたのが2008年。5年後の2013年に独立をして天寿司をオープンした。「人とのつながり」を大事にしてきたという高橋さん。独立当初など困難の多かった時期こそ、人とのつながりに救われてきたという。
「寿司は特別な時に食べるもの。寿司を通してお客様に感動や充実した時間を届けること、一緒に食べる人と人とをつなげる裏方になることが使命だと思っています。一人一人のお客様が店に入った時から、何を求めて来客したのか、何を口にしてどのような反応を見せるのか、満足して帰ってくれたかを考えながらカウンターに立っています」。クイーンアン店で定期的に開催する「マグロ解体ショー」も、おいしさの感動を届ける一環だ。天寿司といえば、大きくて新鮮なネタ。新鮮な魚介類を出すための秘訣を聞くと、「とにかく、仕入れてからお客様の前に届けるまでの時間をいかに縮めるかです」と即答。「それは簡単なことではないですが、長年に渡って寿司レストランを経営して積み重ねてきたノウハウがあります」と、高橋さんは自信をみせる。
そんな高橋さんが、40歳を過ぎたあたりから意識しはじめたのが、シアトル日系コミュニティーとの繋がりだという。「そろそろキャリアの折り返し地点なので、何か自分なりに社会に還元できることができればと思うようになりました。宇和島屋の森口富雄元会長や、店を訪ねてくれる日系コミュニティーの先輩方を見て、これまで重ねられてきたシアトル日系コミュニティーの歴史に感謝して自分なりに貢献できることはないかプラスになる何かができればと感じるようになりました」。今年頭、インターナショナル・ディストリクトに天寿司2号店がオープンした。「このエリアは、かつて日本人経営の店舗が並んでいたと知り、2号店はインターナショナル・ディストリクトでと考えていた矢先にチャンスがありました」と高橋さんは説明する。今年に入って、北米報知で広告出稿も始めた。「クイーンアン店はシアトル・センターに近くて多くのお客様を迎える雰囲気の店ですが、インターナショナル・ディストリクト店は居酒屋メニューなども拡充させて、近隣コミュニティーの常連客が集ま繋がりを深められるような店にしたいです」と高橋さん。
福島出身の寿司レストランターが、日本町に新しい歴史を刻もうとしている。
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Ten Sushi #35 1207 S Jackson St b106, Seattle
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Ten Sushi Website
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