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リサイクルダイヤモンド〜地球からの贈り物〜宝石物語〜

リサイクルダイヤモンド

By 金子倫子

暑い。それにしても暑い。7月22日、1940年以降の観測史上最も暑い、世界平均17・15度(摂氏)を記録した(7月末日時点)。日本でも2018年以降毎年連続で40度を超える酷暑日が記録され、環境破壊による地球温暖化が、身をもって感じられる。

今回は、前回のサステナブルなジュエリーに関する話に続き、ジュエリーや宝石の再利用、再資源化について。

まずは「再資源化」。2008年にアメリカで始まった金融危機以降の金の高騰を受け、家で眠っていた金の売買が活発になった。切れたチェーン、大きな爪のジュエリーのような古いデザイン、昔の恋人からのプレゼントなど。使用されずにいたお宝が再資源化されている。記録に残る限りでの推定によると、人類がこれまでに採掘した金の合計量は約19万トンとされている。

田中貴金属のウェブサイト(https://gold.tanaka.co.jp/index.php)に、再資源化のプロセスが分かりやすく動画にまとめられている。元々ジュエリーだったものや工業用のスクラップなどを集め、王水と呼ばれる塩酸と硝酸の混合液で溶解と還元、金粉になった物をろ過、乾燥、精製。これで99・99%までの純度にしてから再度溶かし、金塊なりインゴットなりへ加工。ワールド・ゴールド・カウンシルによれば、2023年の金のリサイクル率は、前年比で9%増の1237トンとのこと。

これを考えると、私たちの手元にあるジュエリーも再資源化された貴金属が使われている可能性が高い。貴金属は溶解してまっさらな状態になるので、誰かのお古感は無い。では宝石など溶解できない物はどうだろうか?

物には所有者の思いが宿ると昔から言われるが、身に着けている時間が長いジュエリーは、その最たるものの一つだろう。「呪われた」と形容詞が付くことも多い、スミソニアン博物館にある青いホープダイヤモンドはその代表例だ。そもそもいわくつきの物は避けるとして、前の所有者が分からないジュエリーや宝石をそのまま「再利用」するのは、元所有者の思いや運命を引き継ぐようで、何となく抵抗がある。

しかし現在の貴金属を含めジュエリーの価格高騰や環境に配慮という観点からしたら、再利用にもっと取り組むべきだと思うのだ。

日本も今や約3分の1の婚姻は離婚という結末を迎えていると考えると、タンス預金のごとく眠っている、もしくは売却された婚約、結婚指輪の数も相当数だろう。ネットショップで、ユーズドだ思われる物を目にすることも珍しくない。離婚、婚約破棄、死別などが理由で中古となってしまったであろうこれらの品々。しかしこれを再利用してプロポーズしようという人は極々少数派ではないか。それではほかにどのような再利用の道があるか?

まず一つは、先に述べた金のリサイクルと同様、一度小売りや卸に戻されて再出発するケース。金のように溶かすことは出来ないので少々状況は違うが、たとえば2010年創業のホワイトパイン・トレーディング社はリサイクルダイヤモンドを多く取り扱う。少し古いデータだが、GIAの2015年の記事によれば、同企業はその年50万カラットのリサイクルダイヤモンドで、約1億㌦を売り上げた。2021年には「リボーン・コレクション」を発表し、リサイクルダイヤモンドの新しい可能性を広げている。基本的にはメレダイヤと呼ばれる0・1カラットほどの物が多いが、0・2カラット以上の物はGIAに送ってグレード付けをし、自社だけでなく他社のウェブサイトでも鑑定書付きとして販売されている。

これらのメレダイヤモンドは、金の買い取り時にジュエリーに付いていた物がほとんどだそうで、物によっては再カット・再研磨などの加工が施されるとのこと。定期的に開催されるオークションで、品質やサイズなどを混ぜたパーセル(小袋の意)と呼ばれる小分けの状態で販売される。実際通常の卸価格よりもこのリサイクルの方が安価なようで、小売業者は仕入れて加工し販売、そして消費者へという流れとなる。

スペースが埋まってしまったので、続きは次回へ。