Home コラム 一石 警察の存在

警察の存在

好景気を迎えているシアトルの陰で問題視されている治安問題。23日に行われたインターナショナル・ディストリクト(ID)の安全対策会議。未解決事件のダニー・チンさん殺害事件は発生から間もなく1年、迷宮入りの可能性も強い。

そんな中で今現在を生活する住民、ビジネスを行う関係者の思いが激しくぶつけられた。多くのフラストレーションは、「自分たちが後回しにされている」感情面、感覚的 な部分が大きい。IDに関わる人々であれば理解できる部分だろう。

多様な文化を背景とする当地のユニークさが逆に問題の深さを浮き彫りにする。生活者の多くが英語に不自由、また独特な各国の文化が色濃く残る。警察側の対応も難しいだろう。ダウンタウンに近い便利な土地で住民も増えている。シニアアパートも建つ。そこにホームレスやドラッグ、交通の問題などが絡んでくる。もっとも「厄介な」地区、弱者の多い地区ともいえる。

「日本のような交番があれば」という声も以前はよく耳にした。巡回の警察官がいること が一番良いのだが、会議でも指摘されたように改善は見られていない。会議のあった時間 にドア越しに道路を見ていたが、警官が通る姿はなかった。

本紙の事務所周辺でもアクティビティーが見られる。ドアから中をのぞく、開けようとする、入ろうとするといった行為も目にする。

ある警察官に対応を頼んだことがある。だが、その警官は担当が 「交通班」ということで 対応できないとの返事だった。代わりに電話番号をもらい、事務所に連絡先として置かれ ている。

会議の中で警察の配備が議題に上がった。警察官の増員も約束されたが、果たして治安に頭を悩ませている人々を即座に安心させることができるだろうか。

前述のように、治安に対応できない警察官を多く配置しても解決にはならない。会議の声にもあったように住民が求めているのは、現在の問題解決であり、長期的視野による改善は望んでいない。故チンさんも公園に自らの名を冠することをする以前に、市政にすぐにできることはないか訝っているのではないだろうか。

お互いの信頼関係の構築は、ID地区に関していえば非常に難しい状況といえる。会議の中で出た意見をもとに即効性のある成果が期待でき、住民との信頼関係を第一とする指導者が必要だ。

(佐々木   志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。