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日本との距離

先日、ある出張先で仕事を終えて宿泊先に向かう途中のこと。電車を降り、信号を待つ間に電話が鳴り応対し終えると、隣にいた青年が「日本人ですか」と目を大きくして聞いてきた。

地方都市を走る電車の中でアジア人は筆者だけだった。その環境で日本語を耳にした驚きがあったのだろう。聞いてみると、翌日から日本へ2週間の旅行に向かうところだという。大きなバックパックを背負い、まず東京へ。そこからさらに各地へと足を延ばしたい考えで、どこに行くのが良いか、何を見ればよいか尋ねられた。

に滞在経験があったそうで、それに比べて筆者の日本の時計は止まったまま。おそらくこの青年のほうが日本に詳しいのではないか。筆者がいたころに比べ天候も大きく変わったので確証はできないが、まず桜の季節に触れること。そして好きな食べ物を楽むようにと、ありきたりのことを伝えた。

為替の関係もあるが、物価については米国に比べ安価に感じられる部分があるのではないか。もちろん近年で急激に増えている海外から日本への旅行者についても話題になった。その1人として、彼もまた「日本ブーム」に大いに注目しているようだった。

日本政府観光局(JNTO)によると、2019年1月、2月の海外からの訪日人数は近年の爆発的な数字の伸びには届かないが、昨年に比べて1月で7・5%増の約269万人、2月は3・8%増の約260万人だったという。昨年の総数約3119万人を超える上で順調な滑り出しといえる。

当地でも3月31日に日本航空(JAL)のシアトル―成田線が就航。また1本、日本とのつながりができた。報道によると、同路線は1992年以来の再開というから、「平成」の時代はほとんど運航されなかったことになる。イチロー元外野手によって近くなった約20年の日本とシアトルの関係発展を示しているようだ。新たに発表された「令和」の時代を象徴する一便となるだろうか。

令和元年となる2019年。先述の青年のような人々をあらゆるところで見かけ、日本と世界各地との距離はますます近くなった。

(佐々木 志峰)

 

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。