文:松崎 慧
ワシントン州のコミュニティカレッジ委員会(SBCTC)の理事長に、ジャン・ヨシワラ氏が6月から就任する。
これまでワシントン州教育委員会理事長を務めてきた同氏は、学生に明確なキャリアプランをサポートするための新制度「ガイド・パスウェイ」のための予算8000万ドルを議会に要請する意思を示してきた。
アメリカには大きく分けて四年制大学とコミュニティカレッジの二種類の高等教育機関がある。後者は、一般的に専門技術の養成に焦点を当てているが、四年制大学への編入のためのクラスも多い。SBCTCによれば、ワシントン州には現在、34のコミュニティカレッジがあり、約38万人の学生が通うという。ヨシワラ氏は、今回の就任を受けて「二年制のコミュニティカレッジは低所得層やマイノリティー層を含むより幅広い学生に教育の機会を与えられる場だ」と語り、「ガイド・パスウェイ」制度が学生の道標としての役割を果たすことで、州内の大学進学率の向上につながることを期待していると伝えた。
アメリカでは、高騰する四年制大学の学費が一つの社会問題になっている。奨学金制度も用意されてはいるが、高騰する学費は、低所得家庭に育つ子供たちが四年制大学へ進学する機会を阻む大きな要因になっている。そうしたなかで、コミュニティカレッジは、比較的安価に高等教育を受けられる場として注目を浴びている。
NGO団体「カレッジボード」の調べによれば、四年制の州立大学の一年間の学費は約2.2万ドル、私立大学は約3.5万ドルかかるのに対し、コミュニティカレッジの一年間の学費は約1.5万ドルだという。ワシントン州では、高校生が、大学進学前から四年制大学での必須科目を履修できるプログラムなども用意されている。ジャン・ヨシワラ氏の就任で、ワシントン州におけるコミュニティカレッジのプログラムが更に充実し、幅広い層の学生が高等教育機会を得るチャンスが高まっていくことが期待される。
一方、日本の高等教育制度は、アメリカの仕組みとは多くの点で異なっている。アメリカの大学には、柔軟な編入制度や、入学後の専攻選択制度など、プログラムに多様性や柔軟性がある点が、日本と異なる特徴の一つだ。大学入学前に休暇を取り、課外活動などの経験を積むギャップイヤー制度なども存在する。学業面では、一般的に、アメリカの大学では少人数クラスで厳格に課題を提出したり発表したりすることが求められ、受け身の講義が主流の日本の大学と異なっている。しかしながら、日本の四年制大学の方が、学費は大幅に安い事もまた事実だ。
日米の教育制度のどちらが優れているとは一概には言い切れないが、両国の制度を知ることは、双方の改善点を考える上で参考になるかもしれない。