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第85回 「交流」と「相手を楽しませる楽しさ」〜招客招福の法則

筆者:小阪裕司

時期が少し遡るが、以前、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のあるキャンプ場から、ハロウィンに仮装イベントを行ったという報告をいただいた。年間様々なイベントを行っている同キャンプ場。最初は「仮装してキャンプする人なんかいるのだろうか?」と半信半疑で始めたものの、最近はすっかり定着した人気イベントとのこと。

送っていただいた資料写真を見ると、想像以上に本格的な仮装だ。町を練り歩くわけでもないのでより凝った仮装ができるのか、ほとんど着ぐるみという恐竜の仮装をした家族もいる。データを見ると、年々増えている参加者の中の、およそ半数がリピーター。このイベントの楽しさ、参加された方々の満足感を示していた。実際報告にもこうあった。「キャンプ人気も手伝って、利用件数は年々増えています。とはいえ 10月下旬ともなると朝晩はかなり冷え込みますので、初心者の方は敬遠する時期です。また、普通は日にちが近づくに連れて徐々に予約が埋まっていくのに対して、この日だけは予約が埋まるスピードがとても早かったのです。これはおそらく、リピーターさんが『今年も行く!』と決めておられて、いち早く予約するという行動を取ってくれているのではないかと思われます」。その通りだろう。

さらに今回印象深かったのは、仮装と並行して、お客さんが自分のキャンプサイト(キャンプ場の敷地の中でテントを張る場所)で、不要になった子ども服やおもちゃなどを販売する、フリーマーケット・イベントを行っていたことだ。

これを、先の仮装と合わせて考えてみよう。仮装は、他の方の仮装を見て楽しみ、自分たちの仮装にも反応してもらえてこそ楽しいものだ。つまりその楽しさの核には「人との交流」があり、「相手を楽しませる楽しさ」がある。なので、フリーマーケットの同時開催が効いているだ。ここには、同じキャンプ場の、しかも仮装イベントに来たというある種の仲間意識の中で、さらなる「交流」と「相手を楽しませる楽しさ」がある。報告書にも、「むしろ自分がイベントの一役を担っている、ちょっとだけ主催側に足を踏み入れている、自分の貢献が子どもたちを笑顔にしている、という事に喜びを感じてくれているのではないでしょうか」とあったが、まさにそう。自分も「楽しむ」側であり、「楽しませる」側でもあることが、今日のお客さんにとっての「楽しさ」だ。これから季節は春。あなたのお店や会社でも、何か考えてみては?

小阪 裕司
山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。