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第66回  商売では、何をおいても

前回、ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)のあるレストランからの報告を紹介した。4月からの緊急事態宣言下、営業自粛中にも関わらず、前年比150%を達成した成果。その背景には、絆のある顧客の存在があったという報告だった。

絆のある顧客――それがどれほどのポテンシャルを持つか。このコロナ禍での別の店の取り組みからも見ることができる。その店は、味噌蔵が経営する直売店。来店客のおおまかな属性は、観光客4割、地元客6割。コロナ情勢が色濃くなってきた頃から、観光客はゼロに。地元客も動きが悪くなってきた。元々、イベント集客や観光集客を得意としていた店だが、それはできないし、かといって地元に大々的にチラシをまくわけにもいかない。では、どうするか。

そこで生きたのが、顧客リストだ。長年「顧客リストが財産」「顧客リストこそ収益源」と言い続けているワクワク系。同社もそれに取り組んでいるゆえ、4000名程の顧客リストがあった。単なる住所録ではない。普段から絆を育む活動をしている、絆顧客のリストである。このリストにある顧客へ様々な働きかけを行うと、結果は出た。従来売上の4割を占める観光客分がゼロになったにも関わらず、前年比106%で着地できたのであった。

それだけでも素晴らしい成果だが、さらに次がある。同店では、4000名の顧客リストに対してダイレクトメール(以下、DM)を打ったのだが、それを一気には行わなかった。毎週一定数のDMを分散して送っていったのである。なぜそんなことをしたのか。それは、お客さんと従業員のためにも、人が密集する状態を作らないためだった。

この考えに基づき、まずは4月中に一度テストDMを発送。そこでのDMの回収率やお客さんの買い上げ状況を見ながら、策を練っていった。同店の社長は言う。「店が混みすぎず、また暇にならないように、そして狙った売上が作れるように、発送枚数、DMの発送日、訴求すべき商品、店舗オペレーションを練り直し、本番に挑みました」。

驚くべきことではないだろうか。顧客リストをきちんと育てておくと、このコロナ情勢下でも、これほどまで狙い通りに売上が創れるのだ。しかも今回、DMを連発したわけでもなく、売上に対するDMの制作発送コストは約2%だった。今回の結果を受け、スタッフからも口々に「もし顧客リストがなかったらと思うとゾッとする」「会員さんに支えられている」といった声が聞かれたという。「ワクワク系を始めたら、何をおいても顧客リストを作ること」――これは、彼からのレポートの締めの言葉である。

小阪 裕司
山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。