Home コラム 招客招福の法則 第52回 ある日、自分が...

第52回 ある日、自分が驚くような自分になる

稀代の名野球選手・イチローが引退した。その引退会見で述べた言葉が、私が長年ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)を主宰してきて思うことと深く共鳴し、心に響いた。今日は珍しく事例の話ではないが、分かち合いたい。

イチロー氏は引退会見で、「生き様で伝わっていたら嬉しいということはありますか」と問われて、こう答えた。「あくまでも、秤(はかり)は自分のなかにある。自分なりに秤を使いながら、自分の限界を見ながら、ちょっと超えていくということを繰り返していく。そうすると、いつの日か『こんな自分になっているんだ』という状態になって」。

ある日、「こんな自分になっているんだ」と、自分自身に驚く日が来る。そう自分のことを思える状態。今までと違った感覚を感じられ、違った結果を出せる状態。これこそまさに、学び、実践してきたことが、ある一定以上のレベルに達したときに、誰もが実感することだ。

これに極めて近い感覚で、ワクワク系を学び、実践している方々がよく口にする言葉が、「ある日、世界が違って見えた」というものだ。最近、弊会の年間表彰を受けたある商社の営業職の会員さんも「その日」をはっきり覚えていると言っていた。その日、急にそういう感覚がやって来て、その後は、ワクワク系の知識や情報が全く異なるレベルで理解でき、なかなか自分の仕事に落とし込めなかった他業種事例も、どんどん落とし込めるようになったと。

同じく年間表彰を受けたリフォーム会社も、ある頃から、月を追うごとに弊会に届く実践レポートのレベルが上がっていった。そうなると、それまで売れなかった土地が売れ、個別相談への申込率が劇的に向上するなど、出せる結果も大きく変わっていった。「課題は山積みですが、ワクワク系で『変えられる』ことを実感した今では、それすらも楽しく思えます」と、頼もしい同社からのコメント。「地道に学びと実践を繰り返すことが大事」だと話す。

イチロー氏も、会見でこう言葉を続けた。「だから、少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけないというふうに思うんですよね。一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それは続けられないと僕は考えているので。地道に進むしかない」。

私は、長年多くの「その日」を迎えた方々を、そしてその方々のその後を見続けてきて強く思う。イチロー氏のこれらの言葉の中に、今日ビジネスで成功するにはどうしたらいいかの、明快な答えもまた語られているのである。

山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。