Home コラム 招客招福の法則 第43回 喜ばれること...

第43回 喜ばれることと儲けること

招客招福の法則
筆者:小阪 裕司

ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)ではイベントの企画・開催を奨励しており、実際、実践会の会員企業は、B tо C、B tо Bを問わず、大掛かりなものからささやかなものまで、多くのイベントを開催している。そこでたまに耳にするのが、「イベントをやって、喜ばれてはいるのですが、なかなか売上にはつながりませんね」というものだ。そこで今日はこういう話をしよう。あるおでん屋さんからの報告だ。

このおでん屋さんがイベントを行った。それは「おでん総選挙」。同店が出している数十種類のおでんのなかで一番好きなものを投票してもらい、ランキングを決めるという、お客さん参加型のイベントだ。投票してくれた方には、様々なプレゼントが当たる特典もある。そしてイベントは大いに盛り上がり、1か月で約1200名の投票を得たのだった。

と、これだけをいえば、「イベントをやったら大いに盛り上がりました」という話で、ここで終われば、喜んでもらえたが売上につながらない、イベント期間中は上がったがその後は戻ってしまった、という類の話になりかねない。しかしこの店は違った。なぜならそもそもこのおでん総選挙には、「イベントで盛り上がる」「総選挙中の売上を上げる」以上の目的があったからだ。それは「新規名簿を作ること」である。

顧客名簿を作ることは、ワクワク系では重要な取り組みだ。名簿があればつながることができ、そこから再来店や次の購買を生み出すことができるからだ。では名簿につながる個人情報をどうすればいただけるか。これは悩ましい問題で、同店も常々名簿作りを意識しており、常連客もたくさんいるのだが、なかなか名簿は増えなかった。その状況を打開するための施策が、今回のおでん総選挙なのである。

もちろん、総選挙をやりさえすれば自然と名簿が増えるわけではない。同店では投票者に抽選でプレゼントが当たる特典も付けたが、それだけで名簿が増えるようなら苦労はない。そこで同店では、投票の際、住所・氏名等もスムーズに記入してくれるよう仕組みを作り、投票用紙も工夫するなど、様々な手を打った。それらがあるからこそ、今回の成果となった。約1200名の投票者のうち、新たに獲得できた名簿は、実に1100名分だったのである。

同店では同時に、次の来店につながる仕組みも考え準備し、早速その仕組みは稼働している。それが、「喜ばれても売上につながらない」から脱却する方法だ。こうして考え実行していくことで、「お客さんに喜ばれる」ことと「儲ける」ことは、常に良い関係で結ばれていくのである。

 

筆者紹介
小阪 裕司 山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。

山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。