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ワシントン州で全世帯の23%が相対的貧困 物価上昇に追いつかぬ賃金

ユナイテッド・ウェイ報告
ワシントン州で全世帯の23%が相対的貧困
物価上昇に追いつかぬ賃金

全米で社会貢献活動を展開するユナイテッド・ウェイのパシフィック・ノースウェスト支部が6月16日、ワシントン州内の相対的貧困世帯が全世帯の23%以上で、過去最高の割合であると発表した。ユナイテッド・ウェイの関連機関であるユナイテッド・フォー・アリスが同日にリリースした報告書をもとにした発表したもので、ALICE (Asset Limited, Income Constrained, Employed)と呼ぶ、生活保護対象の貧困には当てはまらないものの、一般的な生活レベルを保つことが難しい世帯数を割り出したものだ。ワシントン州内で、仕事や収入があっても必要最低限の生活費を賄う余裕のない相対的貧困家庭が増加していることを示すもので、急激な物価上昇とそれに追いつかない賃金が原因としている。

ユナイテッド・フォー・アリスによる報告書は、米国国勢調査(センサス)からの統計数字などをもとに、2007年から2018年までの貧困世帯数とALICE世帯数の推移を示したもの。報告書によれば、ワシントン州における2018年のALICE 世帯は、州全体の約290万世帯の約23%で約67万世帯。2007年の約15%から大きく上昇した。連邦政府が指定する貧困レベル(FPL)以下の世帯は約11%のまま変化していない。2018年のFPLは年間個人所得1万6147㌦、4人家族の場合の年間世帯所得で3万3383㌦。一方で、同調査では、ワシントン州のALICE世帯は、年間個人所得2万2524㌦以下、4人家族で乳幼児と幼稚園児を養う場合で年間世帯所得で7万2600㌦以下としている。州内の住宅費、保育費、食費、交通費、医療費や医療保険、スマート・フォン維持費などの平均金額から、それぞれの家族構成で必要最低限の生活費を計算し、ALICE世帯を定義している。

ユナイテッド・ウェイのパシフィック・ノースウェスト支部長であるジム・クーパー氏は、新型コロナウィルス感染での影響がALICE世帯を直撃していることに強い懸念を示し、「ALICE世帯がいくら懸命に働いたとしても、賃金と必要な生活費の差は広がるばかり。健康保険や病欠手当などが保証されていないALICE世帯は、コロナ禍で大きな経済的危機にある」と伝えた。そのうえで、今回の報告を参考に州や地域レベルで早急なALICE世帯の経済救済策を行う必要があると訴えた。

ユナイテッド・フォー・アリスによるワシントン州のALICE世帯についての調査結果の詳細は、同プログラムのウェブサイト(www.UnitedForALICE.org/Washington)で閲覧することができる。

(中山栞・室橋美佐)