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NAPジャパンツアーと共に、四国、宇和島へ

NAPジャパンツアーと共に、四国、宇和島へ

コロナウィルスからようやく解放! と感じた2023年春、北米報知社(NAP)が企画している日本旅行が再開した。今年10月のツアーは四国への旅、ということで、私も沖縄から3日間だけ合流した。

20人ほどの参加者はほとんどが中高年層の日系人で、すぐ輪に溶け込んでしまった。

ツアーはシアトルを出発し羽田に到着後、約2週間かけて、羽田、高知、松山を巡る。私はその中盤の松山から宇和島をバスで一緒に回った。

愛媛県の名産はミカン、真鯛、カツオなど、おいしいものがいっぱい。道の駅を何カ所か回り、夕飯には鯛めしやカツオの刺身などを堪能。ツアーでは天神産紙工場で和紙の紙すき体験、四万十しまんと川遊覧、土居真珠工場、宇和島城など、一人旅では経験できないことを満喫した。

紙すき体験に集中するトミオさん

四万十川の屋形船では現地で捕れたアユの塩焼きが出され、アユの餌は何かという質問から、台風の被害の話へと広がった。アユは川底に生える苔を食べて生きている。四万十川は川底がなだらかで、風のない時はまるで池のように穏やかだ。そこに生える苔は泥が溜まって埋もれてしまうことが多く、川底を混ぜ返してくれる台風が年1回くらいは必要とのこと。ところがここ数年、年数回の台風に襲われ、2005年9月の台風14号では水位がおよそ10メートルも上がり、359戸に被害が及んだ(土木学会年次学術講演会講演概要集Vol.61-2)。そんな話はまるで嘘のように、池の水面と同じように穏やかな日差しの中で、アユの塩焼きを食べながらゆっくり下る遊覧船は、久々の癒しを与えてくれた。

四万十川の屋形船から。晴天に恵まれた

四万十川の遊覧終了!

その後2時間ほどバスに乗り、こじんまりとした夕暮れ間近い宇和島城を散策し、ホテルへ。

宇和島城。夜はライトアップが美しい

直美さんとトミオさん

宇和島市外れの海岸沿いにある土居真珠工場 (www:doi-pearl.co.jp) では、3代目社長、土居一徳かずのりさんと加工販売部の清家直美さんが出迎えてくれた。直美さんは、1940年後半から活躍したシアトル初めての日系女性産婦人科医、ルビー・イノウエ先生の従妹の娘さんだ。故イノウエ先生はシアトルの宇和島屋創始者、森口富士松氏と同じ宇和島市の出身、北米報知社発行人で前宇和島屋CEO 、トミオ・モリグチさんとは敬老ホーム関係でも親しかった。私自身、かつてシアトルに住んでいた頃お世話になった、当時まれなる女医。

真珠の養殖場

土居真珠は、1957年に1代目延徳のぶのりさんがアコヤ貝の稚貝の採苗さいびょうを始め、真珠養殖業へと移行した。その後、加工販売部、真珠養殖体験ツアーの開始など、60年余り浮き沈みを繰り返しながら続けてきたそうだ。近海ではハマチの養殖が盛んで、養殖のために使われる餌の食べ残しが真珠養殖に必要な海を汚し、両立は困難とのこと。また、真珠の人気は流行に左右され(ミニスカートには似合わないらしい)、当時の海外向けの販売はアメリカを経由することが多く、国内外の景気、経済状況に左右される不安定な状況の中にあった。

養殖がダメなら加工して販売すればいい、という考えの2代目秀徳ひでのりさんは、真珠加工の免許を取り真珠加工販売部門を立ち上げた。しかし90年代は、漁場の荒廃やアコヤ貝の大量「異常へい死」勃発など、自然との闘いや過剰生産などに加え、バブル崩壊、世界的不況という外部要因との闘いの時代でもあった。

3代目一徳さんは、宇和島を訪れた観光客に養殖場を案内する真珠養殖体験ツアーを始める。そのほか、パールパウダーを使った化粧品作り、「パールエステ」の開発など、新しいことに挑戦している。パールパウダーの成分は美容、健康に良いとされ、現在化粧品、食品などの材料に使用されている。愛媛県資源循環優良リサイクル製品にも指定された。

3代目社長、一徳さん。触っているのが日本のアコヤ貝。
中央はオーストラリア産、一番手前がベトナム産

アコヤ貝

一徳さんは、真珠に関する全ての物から可能性を掘り起こすことで、業界の活性化を目指している。祖父から受け継いだ、伝統真珠への熱い思いは世界一、と自負する。

私たちが見学したのは、核となる5ミリ強のドブ貝の貝殻を削って丸くした球(核)が、アコヤ貝の中で真珠としてコーティングされるように仕込む工程だ。帆立貝のような形をしたアコヤ貝は牡蠣の種類で、その貝柱は食用にもなる。貝殻の内側はアワビの貝の内側のように光り、美しい。貝のヒモの辺り3ミリほどの部分と、核となる球を生きている別のアコヤ貝に入れ込み、それが1、2年ほどで球をカバーしながら成長すると真珠になる。60パーセントくらいしか産出できないという。

核になる球をアコヤ貝に入れる様子

収穫した真珠の大きさ、満遍なくコーティングされているかなど、品質管理と加工がされ、やっと製品の値段が付く。大きい貝には大きい球を入れるが、大きすぎると貝にとってストレスになり、美しくコーティングされないとのこと。大きければ良い、という問題ではないのだ。

土居真珠の桟橋
宇和島市長、岡原文彰さんがお見送り

一人旅では味わえなかった体験、見学を終えてホテルに着き、翌朝、皆に別れを告げた。久しぶりの英会話、参加者たちからは遠い親戚や家族のように温かく迎えられ、とても充実した3日間であった。
NAPジャパンツアーは来年、北海道か沖縄旅行を企画している。

(天海幹子/沖縄)