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日系人アートをめぐってベルビュー・カレッジ学長らが退任

ベルビュー・カレッジの大学理事会は、3月2日、キャンパス内に設置されたアート作品「Never Again is Now」の一部をアーティストに許可なく改変したとして、副学長の一人であるゲイル・コルストン・バージ氏と、学長のジェリー・ウェバー氏の退任を決定した。当該のアート作品は、シアトル在住のエリン・シガキさんによるもので、第二次世界大戦中に強制収容された日系アメリカ人の子供2人の写真を、高さ11フィートに引き伸ばして建物の壁に貼り付けたもの。作品タイトルには、「強制収容の歴史を繰り返さないように」というメッセージが込められており、今年2月19日に、日系人強制収容を許可する大統領令9066号が発令された1942219日を記憶するデイ・オブ・リメンバランスを記念して設置されたものだった。改変されたのは、シガキさんによって記述された作品紹介文のうち、「イーストサイドのビジネスマンであったミラー・フリーマンらによる何十年にも及ぶ排日運動扇動の後、ベルビューを農地開墾した60家族300人が大規模強制収容に送られた」の一文が、バージ氏によって、シガキさんに断りなく削除された。この改変を巡って、日系アメリカ人市民同盟(JACL)など日系アメリカ人の活動家や団体らが、ベルビュー・カレッジに対して抗議活動をしていた。

 ミラー・フリーマン氏は、第二次世界大戦当時、米国西海岸で有力なビジネスマンで、自身が経営する新聞媒体を使ってワシントン州内でも排日運動を扇動していた。一方、戦前のベルビューでは、多くの日系移民農家がイチゴ栽培などで成功を収めていた。ミラー・フリーマンの息子であるケンパー・フリーマンSr氏は、現在のベルビューの中心地となっているショッピング・モールのベルビュー・スクエアを1946年に開発。現在は、3代目のケンパー・フリーマンJr氏が、同モールを含むベルビュー・コレクションを所有・管理するケンパー・デベロップメントのCEOを務める。ケンパー・フリーマンJrと妻のベティは、2019年度にベルビュー・カレッジへ多額の寄付金を提供していることがわかっている。

 ベルビュー・カレッジは、本件に関して、ウェバー元学長による謝罪文を学生や大学関係者あてに発行し、バージ氏による謝罪文も理事会で発表された。3月12日には、臨時で学長代理を務めるクリスティン・ジョーン氏と理事会長のリチャード・フクタキ氏から、「地元のアジア系アメリカ人の歴史を、本校の学生、教師、スタッフが学ぶ機会を増やしたい」とのコメントを添えた謝罪文を、日系アメリカ人コミュニティー関係者へ送った。肝心の、バージ氏が作品の一文を削除した動機については、明らかにされていない。

(坂本小夜)

横浜生まれ東京育ち。大学院進学のため2015年よりシアトル在住。日本のポピュラーカルチャー、特に1960-70年代の音楽について研究。歌謡曲と任侠映画をこよなく愛する。週末はアンティークショップ巡りや、ワシントン州の豊かな自然を探索しに出かけるのが楽しみ。