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2度とないように

 第二次世界大戦下、当地を含む西海岸地域から日系人を強制退去させた大統領令9066号の発令から80年となった。バイデン大統領が18日に声明を発表するなど、2月19日のデイ・オブ・リメンブランスは日本のメディアでも取り上げられていた。

 バイデン大統領は、「80年前にあった日系米国人の収監は、人種差別、恐怖、嫌悪の増長を許した際に悲劇的な結果を招くことを今日の我々に思い起こさせてくれている。我々の歴史における暗黒期で、取り返しのつかない痛みを受けた日系人に対する連邦政府の公式謝罪を改めて明言する」と表明。「米国的でない行為には今後決して関与しない」との決意を示した。

 全米各所で2月19日前後に関連行事があり、ワシントン州議会では18日、日系議員が中心に起草するデイ・オブ・リメンブランスの決議が上院、下院でともに採択された。シアトルの日系人が送られたミニドカ収容所のあるアイダホ州でもデイ・オブ・リメンブランスの声明が発表されたことが伝えられた。またこれに先立ち、連邦議会ではコロラド州グラナダのアマチ日系人収容所を国定史跡とする法案が上院を通過した。

 先日出張先となったユタ州ソルトレイクシティー。周りを囲む雪の山々や塩湖グレートソルトレイクの広大さに感銘を受けた一方、ダウンタウンを南北に走る道先に建つ州議事堂の姿が強く印象に残った。同州議会では毎年2月19日をデイ・オブ・リメンブランスとする法案が可決され、2月19日の知事署名で公式なものとなった。車で南へ約2時間半の荒野にはトパーズ日系人収容所があった。サンフランシスコ周辺を追われた1万1千人以上が収容されたという。

 バイデン大統領は過ちを繰り返さないため、「2度とないように」との言葉を用いた。日系コミュニティーで最初の強制退去地となったベインブリッジ島に建つ記念碑に刻まれ、本紙で何度も使われてきたフレーズ。2月19日、ベインブリッジ島では約1カ月後の周年行事のため清掃イベントがあった。

 ニュースに耳を傾け、記事に目を通すたび、「2度とないように」と言う収容所経験者の声が鮮明に蘇ってきた。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。