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第30回 売上回復の意外な秘訣とは

ある飲食店から、ランチメニューの改善についてのご報告をいただいた。と言っても料理の中身やメニュー構成の話ではなく、メニューの表現、書き方・見せ方についての改善だ。

添付されていた旧メニュー表と新メニュー表の違いは、一見して際立っている。

例えばそこには「手打ちそば膳」という料理があるが、以前は料理名と内容(小鉢、お造り、揚げ物、等々)だけが、文字だけで羅列されていた。こういうメニュー表は一般的であちこちで見かけるものだが、新メニューではそこに写真をあしらい、直感的にどんな料理なのか分かるようにした。そして、「今回は岐阜県美山産のバルバリーを使用」などの料理ごとの詳しい説明や、「お客様アンケートでリクエストの高い」などの文言を加えた。また、「天ぷら膳」では、天ぷらに使う野菜の揚げる前の写真も見せるなど、ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)的な改善を繰り返した。その結果、近年下降していたランチの売上は上昇に転じ、以前はお手頃な価格の料理がランチの主流だったが、今は自慢の鰻丼や懐石も出るようになった。ちなみに鰻丼は3300円と、けっこうなお値段。懐石に至っては4800円だ。ところがこのようなメニューの改善を重ねてみたら、いずれもコンスタントにオーダーが入るようになったのである。

と、メニューの改善について詳しく触れてきたが、ここで私がお伝えしたいのは、その詳細な改善点についてではない。重要なのは「視点」であるということだ。

ワクワク系の視点で点検すると、日常業務の中にも改善できることが山のように見つかる。しかし、逆に言えば、その視点を持たない限りそれは見つからない。この例で言えば、ランチの売上が下がってきたとき、ワクワク系的視点がなければ、「メニュー表の表現が足りないのではないか」という思考は働かない。そのように思考が働かなければ、メニュー表を改善しようとも思わないし、改善行動は起こらない。そして、適切な行動が成されなければ、良い結果は生まれない。

同店でも、実はこのメニュー表、4年間放置されていたという。店主らは「ランチのお客様は大事だと知っていたのに、自分たちが取っていた行動はそれにそぐわなかった」と振り返るが、視点がなければ気づかないものだ。そして、改善すべきが放置され、ともすれば「価格が高いのではないか」といった方向へ向いてしまう。

このような実践と成果のポイントは、実は「視点」なのである。

(小阪 裕司)

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。