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再開の春〜一石

 桜咲く季節を迎えた。自宅近くを歩けば庭に大きな桜の木が植えられた家々があり、枝の先まで美しい花を咲かせている。仕事へ向かう際の移動でも、桜の開花状況を確認しながらの日々。毎月、毎週、桜の種によって開花時期が違う。しばらく続く春の楽しみでもある。

 ジェイ・インスリー知事が4月15日から新型コロナウイルスのワクチン接種対象を16歳以上の一般住民にすると発表した。まだ時間は必要だが、「元通り」の社会へ向けた歩みも着々と進み、いよいよ「春」を迎えた実感がある。

 たびたび似た話で申し訳ないが、シアトル・マリナーズが「活動再開」の象徴となるシーズンを開幕させた。1日の開幕戦から地元Tモバイルパークに観客を入れ、菊池雄星投手も活躍を期待させる投球を見せるなど、熱戦を繰り広げている。開幕戦で勝利を飾った後、球場に足を運んだファンたちに感謝を示したサービス監督の言葉が印象的だった。

 1年あまりにわたって自宅業務を主に続け、本格的な現場仕事になる。約9千人と人数制限を設けているが、正直、これだけ多くの人を見るのは感慨深いものがあった。それでも、現場に入って少し経つが、会場特有の強烈な寒さを久しぶりに身に受け、さらに「緊張」もあってやや胃が痛んでいる。

 入場にはマスク着用が義務付けられる。ただ飲食時にはマスクを外すことができる。この点が厄介だ。試合を通じてマスクを外したままの観客が多い。アルコールが入り、試合が盛り上がると大きな声が出る。気分よくグループ以外の観客と声を掛け合う姿も見られる。

 どの会場もきっと同じだろう。通常の生活が戻りつつあることが示されているが、テキサス州の試合では満員の観客を入れてその数は4万人近くになったという。

 当地に関しては多くがワクチンをまだ接種できない状況にあることに変わりない。せっかく前進しているのだから、悪化だけは避けたい。少なくとも身を守る緊張感を保ち、「元に戻る」喜びを実感しながら現場の仕事に取り組みたい。

         (佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。