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第34回こんな簡単な 絆作りツールでも

ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法)では、BtoC、BtoBを問わず、顧客との絆作りを行う。それがビジネスに様々な恩恵をもたらすからだが、実際に実践するとなると、どんなことから始めたらよいのか分からない方も多い。そこでこういう話をしよう。
私が主宰するワクワク系マーケティング実践会の会員Aさんから次のような報告を受けた。Aさんは病院などの医療機関に医療機器などを販売している会社の営業担当だ。人事異動があり、新たなエリアも担当となった折、絆作りに取り組んだ。絆作りの相手は、買い手である病院のお医者さんたちだ。Aさんの話によると、前任者はとにかく人懐っこく、話し好きで、取引先からも愛される営業マンだったという。Aさんが引き継ぎに同行した際も、お客さんから「○○くんがいなくなったら寂しい」と言われるような前任者。一方、Aさんはどちらかというと人見知り。これは個人技では難しいと、開き直って取り組んだのがワクワク系の絆作りだった。結果を先に言うと、取り組み始めて数週間で、新たなお客さんたちとの絆が育まれ、なんといきなり1千万円もの受注につながる例も出てきたのである。
彼が行った具体的なことは何か。それは自己紹介カードを作って配るというものだ。これだけの結果を生み出す自己紹介カードとは、よほどテクニカルな凝ったものなのかと思いきや、A4サイズの普通の紙に、まるで簡易な履歴書のように、生年月日や出身、家族構成、経歴や趣味などが書かれているだけの実にシンプルなもの。本人も、「このようなものではたして大丈夫なのか」と思ったと言うが、勢いで渡してみた。しかし、実際に渡してみると、先に言ったような結果がどんどん生み出されてきたのである。
著者がワクワク系を多くの方々に伝えていてよく思うことは、考え方に感心していただいたり、共感していただいても、実際に実践する方が少ないことだ。その一因は、実践を難しく考えすぎることにもある。しかし、Aさんの自己紹介カードのような例を一つとっても、実は、とても簡単なことでも結果は出る。
ポイントは、テクニックではなく、出来栄えの上手下手でもなく、人と人との間に絆が生まれるための必要な要素を押さえているかどうか。つまり自己紹介なら、何を語れば絆ができるかを知っているかどうかだ。あとは、ただそれをA4の紙に書くだけでもいい。まずこのシンプルな原則と知識を知り、やってみること。ワクワク系では常にそれが結果をもたらす近道なのである。
(小阪裕司)

小阪 裕司
山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。