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IDのホームレス・キャンプ シアトル市が撤去

インターナショナル・ディストリクト(ID)、I-5の東側沿いにあったホームレス・キャンプが、5月20日、シアトル市により撤去され、24人のホームレス・キャンプがシェルターなどへ移った。I-5を南からダウンタウン方面に車で走ると、同ホームレス・キャンプに密集するテントが必ず目に入る。景観を損なうだけでなく、犯罪の危険性を高め、使用済み注射器などの危険廃棄物、火災や犯罪などが発生した際に警察や救援部隊の緊急対応が展開しにくい点などが懸念され、優先的な撤去をシアトル市が検討していた。

シアトル市は2017年に、ナビゲーション・チームというホームレス問題に特化したチームをシアトル警察との協力で結成し、対策に当たってきた。今回の撤去を前に、ナビゲーション・チームのスタッフが2019年初頭からホームレス・キャンプをたびたび訪れ、同キャンプに居住していた48人のホームレスに働きかけ、15人を事前にシェルターへ移るよう誘導していた。

ホームレスをなくすための活動や調査を行うアメリカの非営利団体、ナショナル・アライアンス・トゥー・エンド・ホームレスネスの調査によると、ワシントン州における2018年時点のホームレス人口は2万2304人で、州人口の1万人に30人がホームレスという割合になる。ホームレス人口は総じて増加傾向にあり、タイプ別に見ると、単身者のホームレス、長期間ホームレス生活をしている慢性的なホームレス、シェルターなどに保護されていない路上生活のホームレスなどが、2013年頃から著しく増加している。また、ホームレス問題の主な原因として、低所得者向け住居の不足、収入格差、人種差別が指摘されるほか、健康上の問題で破産に陥ったり、家庭内暴力からの避難が理由でホームレスになるケースが多いことも報告されている。なお、シアトル市ホームページでは、市内でホームレスになるケースの主な原因として、家庭内暴力からの避難はあげられず、代わりに薬物中毒があげられている。

2018年度のシアトル市ホームレス問題対策の予算額は、前年度より多い約7800万ドル。シェルター設置や衛生サービスのホームレス・キャンプ訪問提供などの現状対策のほか、低所得者向け住宅の建設などの長期的なホームレス化防止対策にも投資された。

今年4月に発表された2018年度のシアトル市報告によると、こうした対策によって、前年度より7%増の2万5420世帯がシアトル市ヒューマン・サービス局の救援を受け、同じく前年度比17%増の4222世帯がホームレス生活から定住、あるいはホームレス化の回避に至ったという。

今回のホームレス・キャンプ撤去は、シアトル市の一連のホームレス対策の一部として行われた。深刻化するホームレス対策として、今後もシアトル市の地道な活動が進められそうだ。

(坂元小夜)

横浜生まれ東京育ち。大学院進学のため2015年よりシアトル在住。日本のポピュラーカルチャー、特に1960-70年代の音楽について研究。歌謡曲と任侠映画をこよなく愛する。週末はアンティークショップ巡りや、ワシントン州の豊かな自然を探索しに出かけるのが楽しみ。