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国際離婚で弱者に立つ外国人妻 山田総領事がシアトル・タイムズへ寄稿

在シアトル日本国総領事の山田洋一郎(やまだ・よういちろう)総領事が、4月19日発行のシアトル・タイムズへ、国際離婚で弱者に立つ外国人妻へのサポートの必要性を提言する記事を寄稿した。記事タイトルは、「Protect victimized, vulnerable, voiceless immigrant wives」。直訳すれば、「虐待された、弱者にある、声に上げない移民妻を守れ」という表題だ。

記事中で、山田総領事は「#MeToo」ムーヴメントに触れた後、「私が最近になって初めて知った女性虐待の形が、アメリカ合衆国内での不正な離婚訴訟による外国人配偶者への(法的な)虐待だ」と切り出し、外国人妻がアメリカ国内で離婚をした後に、経済的な貧窮状態に陥るケースが多いことを訴えた。アメリカにおける法律システムを理解していなかったり、十分な(訴訟のための)資金力がなかったり、または英語力が不十分である外国人妻に対して、アメリカ人夫が弱みにつけこんで不公正な離婚調停を進めるケースが多いことに触れ、「そうしたケースが外国人妻のみならず、その子供にも影響を与える」と危惧を伝えた。

ワシントン州では、離婚後の親権は、虐待などのケースでなければ、殆どの場合で父親と母親の共同親権になる。それゆえに、外国籍の配偶者は、離婚をした後には自国へ子供を連れて永住帰国ことは難しい。山田総領事の記事によれば、不利な離婚調停にサインをして正当な財産分与をうけられないままに、仕事を見つけられず、困窮状態で子育てを強いられるケースも多いという。物価高のシアトル近郊にあって、言葉の壁や育児中のブランクを持つ外国人妻が、母子家庭を支えるだけの職を得るのは容易ではないだろう。

山田総領事は、これまでに30人以上の州議会議員などと当問題について話をしており、議員の多くがその事実に驚き、何かしらのサポートをすることを約束しているという。今年3月には、領事館で働く日本人女性弁護士が立ち上げた支援団体への補助金予算も議会を通過したという。記事中で山田領事は、「ワシントン州が国際的なビジネス拠点として更に成長する中で、外国人妻の数は増えるだろう。(不正な離婚訴訟の)被害にあう外国人妻の権利を守ることは、明るく建設的な未来のためにも正しい行動だ」と結んだ。
(室橋美佐)

北米報知社ゼネラル・マネジャー兼北米報知編集長。上智大学経済学部卒業後、ハイテク関連企業の国際マーケティング職を経て2005年からシアトル在住。2016年にワシントン大学都市計画修士を取得し、2017年から現職。シアトルの都市問題や日系・アジア系アメリカ人コミュニティーの話題を中心に執筆。