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歓迎と不安

 ワシントン州政府によると、16歳以上の新型コロナウイルスのワクチン接種率が先週に70%に達したという。またカナダ政府は8月9日からワクチン接種を終えた米国内の住民に対し、カナダが国境を開放することを発表した。旅行者を含め不要不急の人々へ国境を開くのは1年5カ月ぶりとなる。国境と隣接するワ州、その住民にとっても歓迎すべき進展だろう。

 それでも新型コロナウイルスへの懸念は止む気配はない。いよいよ開幕を迎える東京五輪でも五輪関係者から新型コロナウイルス感染者が出るなど不安なニュースが流れてくる。パラリンピック大会が閉幕する9月上旬まで続く長丁場。遠く離れる当地からは、ただ無事走り切ってもらうことを願うばかりだ。

 新型コロナウイルスはデルタ株が主に猛威を振るい、ワ州でも感染者数が増えているという。休暇シーズンに入って人の流れが増し、本格的に経済活動を再開したこともある。街中でのマスク姿もめっきり減った。筆者自身も地元マリナーズへの声援を呼び掛け、「球場に熱気がもたらされるよう願っている」と前号で記していた。だが、仕事からの帰宅時に見た週末夜半のSODOの賑わいなど「通常」への回帰を実感しつつも、驚きと不安を感じたのも正直なところだった。

 仕事現場ではマスク義務がなくなってから久しい。着用を続ける同業者は日本関係者数人に限られるが、リスクを避けるため、周りへの気遣いも含め、できる限りはマスク着用の意識を持ち続けたいと考えている。

 7月半ばから当地はお盆シーズン。合わせて行われる盆踊り大会は地元日系社会の風物詩となる。シアトル、オーバン、タコマと3週続けて開催されるのが恒例だったが、昨年に続き、現地開催はなし。現状を見れば、賢明な判断だろう。シアトル盆踊りは昨年が「米寿」となる88回目だった。今年は89回目。来年開催となれば、「卒寿」となる90回となる。その時は、大勢のコミュニティー関係者が集いに戻るお盆となってほしい。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。