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💍Vol.159 報道のジュエリー〜地球からの贈り物〜宝石物語〜

By 金子倫子

報道のジュエリー


昨年大晦日の前日にバーバラ・ウォルターズが亡くなったニュースが流れた。女性ニュースアンカーとしては先駆者であり、インタビューでの「私のレガシーがあるとするなら、今メディアで活躍している女性達の存在」という言葉通り、バーバラが残した功績は女性の社会進出の中でも大きな一歩だった。

あくまで男性司会者ありきの番組で、男性アンカーから促されるまでコメントすら出来なかった当時の女性アンカーの立場。追悼番組などで昔の映像もたくさんあったが、プレイボーイ・バニーの恰好をされられていたものなどがあり、今どきのZ世代や令和の時代にはハラスメントでしかない事が当たり前に行われていたのを再確認した。

バーバラが正式な司会者として契約したのは私が誕生した年である。約半世紀の時を経て、女性司会者のみ、または女性司会者がメインのニュース番組も数多くある。そこで思うのは、やはり女性であるがゆえの面倒臭さである。MSNBCで自身の名のついた看板番組を持つレイチェル・マドー。ここしばらく、彼女はダークスーツにインナーも暗めの色、右手の中指に四角いモチーフのアンティーク風のデザインのリングをひとつだけというスタイルが確立している。毎日同じ(にしか見えない)装いで、嫌でもニュースの内容にしか意識が行かない。

ただこの様なケースは稀で、多くの女性司会者は毎回同じとは中々潔くいかないものである。服飾の専門ではないのでジュエリーにフォーカスした話をすると、大きく3つのタイプに分かれる。

①デザインや色などが多種多様なコスチュームジュエリーを、服に合わせてとっかえひっかえ。
②貴金属系を重ね付けして、日々違う装い。
③ほぼ毎回同じで数も少ない。

私が良く見るニュース番組の司会者である、ステファニー・ルーレとレイチェルの後任(火曜から金曜)となったアレックス・ワグナーはタイプ②。ステファニーは左手にいくつもゴールドのバングルやブレスレットを重ねたり、ネックレスもレイヤーにしたりだが、指輪は結婚指輪のみかプラスで右手に1個程度。アレックスはネックレスのレイヤーはもとより、指輪も8本の指についている時もあり、やたらに多い。更に、ボブ丈の髪を大抵左耳にかけていて、露出した耳には長いドロップ型やスタッズ型やらいくつもピアスが付いていることも。まだケーブル局の政治的番組をやっていた頃から好きだったので、彼女の出世は嬉しいが、あまりにもジャラジャラとジュエリーが付きすぎていて、見ていて気が散るのである。

これとは対照的なのがタイプ③の、リンジー・デービスとニコール・ウォリス。リンジーもアレックス同様、左耳が出ていることが多いのだが、毎回小さめの白いパールに、左手薬指にウェディングセットのみ。ニコールは元々ジョージWブッシュ政権のコミュニケーションディレクターなどもしていたがメディアに移行。ニコールはヴァンクリーフ・アーペルのアルハンブラがお気に入りなのか、ターコイズのペンダントから始まって、途中で白のマザーオブパールのネックレス(多分10モチーフ)、そして昨年末辺りぐらいから毎回ダイヤモンドのホワイトゴールドのペンダントになった。ターコイズのブルーが服の色とぶつかるのが気になった時もあったのだが、今のホワイトゴールドのダイヤモンドはどの色の服にも合う。因みに今ヴァンクリーフ・アーペルのウェブサイトで見るとネックレスの青い石はアゲートになっている。以前はターコイズだったので、一時的なのか継続的な変更なのか。

それはさておき、女性アンカーのジュエリーは全く無くても味気ないが、着けすぎても見ている側の集中力が削がれて落ち着かない。「3匹のクマ」の話ではないが、個人的にはタイプ③ぐらいがジャスト・ライトである。女性であるゆえの面倒臭さであるが、それを逆手に取って楽しむのもありだろう。

80年代のアメリカに憧れを抱き、18歳で渡米。読んだエッセイに感銘を受け、宝石鑑定士の資格を取得。訳あって帰国し、現在は宝石(鉱物)の知識を生かし半導体や燃料電池などの翻訳・通訳を生業としている。