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中古品を買う時の注意点〜地球からの贈りもの〜宝石物語〜

中古品を買う時の注意点

By 金子倫子

北米報知における箸休め的存在であろうこのエッセーも、なんと今回で15年目に突入。2010年10月20日号に掲載させてもらったのが始まり。連載開始より3人の編集者の方にお世話になり、今に至る。これだけ長い期間続けさせてもらえるとは当時はもちろん想像しておらず、改めて感慨深い。

時代はあのころと変わったような、変わっていないような。2010年はまだまだリーマンショックを引きずっていて、景気に対しても悲観的。パンデミックを経て、とどまるところを知らない物価上昇に悲観的なのは今も同じ。当時、1トロイオンス*が最高値1426㌦を記録して驚いたが、今年の最高値は2529㌦。上昇し続ける金価格は、世界情勢や景気への人々の不安を色濃く映し出している。

*金や銀、プラチナなど貴金属の計量に使用される単位

高騰する貴金属製品の対応策として、前回は中古品をおすすめした。自ら提案しておいてなんだが、実は私、できれば新品を購入したいタイプである。しかし昨今の高騰ぶりに加え、すでに廃番となっているデザインなど、そもそも中古でしか手に入らない物を考えると、SDGsと納得せざるをえないのも現実。

そこで、将来的な転売や投資的な意味合いで中古品を購入する場合の注意点をご紹介しよう。

貴金属であれば、絶対ホールマークやスタンプ、日本で言うなら造幣局の証明記号が付いた物が良い。ただ実際はそれだけでは安心できない。ニューヨークのダイヤモンド・ディストリクト*2で販売されている金の含有率を覆面調査した、という内容のニュース番組企画があった。残念ながらスタンプが付いていても、スタンプの表記より金の含有量が少なかったジュエリーが一定の割合で見つかったのだ。小売業者は、「卸から仕入れただけだから自分たちは知らぬ存ぜぬ」で逃れようとしていた。しかし店舗があって、レシートを含めた売買の証明書があれば責任追及は可能なので、個人販売よりも店舗を持つ販売者からの購入をすすめたい。ネットで購入する場合でも、物理的な店舗が確実にあると確認の取れる販売元を選ぶのが安全だ。

*2マンハッタンの5番街と6番街の間、47丁目の宝石店が多く集まる地区

日本の大手中古品売買企業は、中古品でも正規の新品の8割程度と高めの値段設定だ。その分買い取りの査定はかなり厳しいので、そのような点からも、信頼性が高いと言えるだろう。

次に注意したいのは、流行に左右されやすいデザイン性の高い物よりも、定番のシンプルな物が良いという点。デザイン物というのであれば、カルティエのトリニティやラブシリーズ、ヴァンクリーフ・アーペルのアルハンブラやティファニーのオープンハートなどはデビューから50~100年も経っているにも関わらず、今でも売れ続けている。これらの物は、この先も付加価値を維持していくことが予想される。

中古で購入したエルサ・ペレッティ氏デザインのティファニーのブレスレット(右)。シンプルな喜平のブレスレット(左)は新品購入(筆者私物)▶︎

私が購入した中古ジュエリーの中には、オープンハートをデザインしたことで知られるイタリアのデザイナー、エルサ・ペレッティ氏による品で、今は廃番となってしまった物がある。コレクターと言うほどの情熱で収集している訳ではないが、自分の好みのデザインは少しずつ買い足している。彼女は2021年に亡くなったが、その数年前に購入した当時、「ペレッティが亡くなったら多少価値が上がるだろうな」という思いが頭の片隅にあった。

ブランド物を買う時は、ブランドロゴのスタンプを確認しなければならない。ただ、スタンプの凹凸自体にむらがあったり、歪んでいたりすることも。そういった物を購入するのであれば、万が一偽物でも後悔しない覚悟があるか、鑑定をしてもらうことも視野に入れよう。スタンプの位置も年代によって微妙に違う場合もあるので、微妙な差があるからといって偽物とは限らないのも判断が難しいところだ。

ブランド品には手が届かないが、似たようなデザインが欲しいなら、ブランド品を真似た物でも良いと思う(コピー品を正規品と偽るのはNG)。ただしこれが投資目的なら、ブランドの付加価値が加味された金額に相当するのか? もしブランド品でない可能性があるのであれば、付加価値を除いた部分、貴金属の重量や含有量などが十分見合う物なのかどうかという事に注目してもらいたい。

まずは中古品を扱う店でいろいろ見て経験を積み、審美眼を磨いてはいかがだろう。