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私の東京案内 2

都市の案内書といえば、他所では見られないそのユニークな点やことがら、興味をそそる場所などを紹介し、今ある姿を言及するのが一般だ。だが、そういう場所を、例えば乗り物の窓から見るのはあまり意味がない。その場所を自分で探し当て、そこへ足を運び、よく観る。そして何かを感じ、理解し、できるなら何かを学ぶ。また本などで読んだ知識をもとにして、今はそこにない消え失せた場所や建物、情景(ちなみに東京にはそれがとても多い)を思い描いてみる。これがわたしの考える東京という都市の「楽しみかた」である。

人口1300万、レストランの数をいえば(椅子が五、六脚しかないもの含めてだろうが)20万ともいわれるその巨大都市を案内するのは容易ではない。実は1943年以来だが、東京は「県」(County)でもあり「市」(23区部)でもある。この「案内書」は区部、しかもその中心部のみを扱うわけだが、それでも「楽しむ」となると簡単ではない。また、ガイドといっても書き言葉をだけにする、つまり「写真」の力を大幅に借りないとすれば、どうすればよいだろうか。過去(歴史)に言及し、目前の「今」の向こうにあった物や事柄、また人の生活のありさまを中心に語るしか他に方法はない。これがわたしの案内の仕方である。

東京を足で見て歩く。もうひとつの大都市ニューヨークのマンハッタンを楽しむときと同じで、多少の歴史知識が必要だ。そのうえで、なにしろ歩く。その過程で地元の人と接するチャンスがあればそれに越したことはない。片言の日本語で道を尋ねる(東京を歩けばどうしても避けられないことだが)だけでも大きなプラスなのだが、旅に人間味が加わるからである。そのためには一人旅がいい。ツアーではそういうチャンスはない。他人まかせの受身な遊山ではなく、また単なる「観光」とは一味ちがう。探訪といえる旅の案内となる。だからそれなりの準備(たとえば本を読む)が必要になるし、動き回るには身軽であるほうが、なにかにつけて便利である。また、滞在をなるべく経済的なものにすることも考えてある。

この東京案内記は、そんな旅人(「観光客」ではない)のための水先案内の試みとなる。「日本旅行は金がかかる、Expensiveだ」というバブル崩壊前の印象がいまだに存在するから、それを払拭したい思いもある。事実、1980年代の日本経済の過熱の時期には、欧米人が日本を旅行するのは安上がりではなかった。かなりの円高

だったのが主な原因である。しかし、その気なら安上がりな日本旅は可能なのだから、それを、とくに若い人にむけて言いたい。昨今は為替市場は円安に動いているから今がチャンスである。だいたい外国旅行は金持ちになってからするものではない。感受性の豊かな時に、ひとりになって自分を見つめ、また自分のなかのなにかを発見するのが旅であるとわたしは思っている。いわばひとつの人間修行と思ってもいい。

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さて旅行者は東京を観よう、楽しもうと思ってやってくる。若くて足が達者であれば、ここで案内する場所だけなら一週間でこなすことができるだろう。ゆっくりしたければ2週間ほしい。日本にかんする手ごろな本は歴史本も含め、一、二冊読んであると仮定する。市販のガイドブックを参考にするのも良いが、だいたいが総花的だからどこに的を絞るかは決めたほうがいい。ちなみに、お勧めのガイドブック(英語圏)は「Eyewitness Travel」の「Tokyo」でわたしも参考させてもらった。

まずは成田空港〔最近は羽田のこともあるが〕に到着。都心へ行く手段はいくつかあるが、第1日目の探訪は東京駅の東側にあたる中央区のなかだから、それを考えて交通手段の選択は空港からリムジンバスにする。箱崎(日本橋)まで2900円。かかる時間は交通状態に左右されるが、これがいちばん簡単だ。飛行場ターミナルを出たところにバス停がある。行く先は都内各所だから気をつけて「箱崎シティターミナル」を選ぶ。

夜遅くの到着であれば、バスの終点のすぐ隣にロイヤルパークホテルがある。値段が張る奮発してもいい。が、15分ほど歩けば日本橋かいわいには格安ホテルがいくつかある。例えば「東急ステイ日本橋」(日本橋本町49)はミニキッチンと洗濯機を備え、一泊朝食付きで8400円(シングル)である。成田到着の時間によるが、ここに2泊か3泊すれば、健脚の人なら日本橋、銀座、それと築地界隈を歩くことができる。

(田中 幸子)

編集部より:筆者への連絡先はytanaka03@gmail.comになります。