Home 食・旅・カルチャー 地球からの贈りもの~宝石物語~ 地球からの贈り物~宝石物語...

地球からの贈り物~宝石物語82~ 上野ブルガリア展

昨年末に東京の上野で開催されていたブルガリ展。故エリザベス・テイラーの所有していたジュエリーのいくつかを見ることができた。それらはまさにプライスレス。 金銭的価値では計り知れない程の思いを感じたのだった。
ブルガリ展に出展された故エリザベス・テイラーのジュ リーは、エリザべスの亡くなった年、2011年の12 月 13 、14 日に開催されたジュエリーコレクションのオークショ ンで競り落とされた物と考えられる。

以前にもお話ししたが、オークションというのはかなり興味深い事実が取り巻いている。例えばセキュリティーや他の様々な理由で、競り落とした人物(団体)が分からないようにされることも多い。だからこそ、数十年の時を経て再びオークションにポッと現れ、その存在を世間に知らしめることも少なくない。また前回も話したように、自社ブランドの価値を保つため、または自社のアーカイブに保有したいジュエリーを買い戻すため、匿名で競り落と すことも多々ある。

今回の展覧会を見て初めて、いくつかのジュエリーがブルガリの元に戻ったことを知った。それらのジュエリーは、2002年に発売された『マイ ラブ アフェアー ウィズ ジュエリー』というエリザベスのジュエリーコレクションの本に掲載されている。2日に分けて開 催されたオークションの初日は80 点で1億1600万㌦、2日目は189点で2100万㌦を叩き出した。

最高落札額の品は、数々のダイヤモンドを寄せ付けない。その歴史は16 世紀にも遡る伝説のラ・ぺリグリーナという天然真珠で約1200万㌦。そして2位は2つあり、一つはエリザベスが「マイ・ベイビー」と呼んだ約 33 カラットのクルップという名の付くダイヤモン ドリング。もう一つは、これも歴史が17 世紀初頭に遡るタージ・マハールというダイヤモンドのペンダント。双方とも落札価格は約880万 ㌦。

今回のブルガリ展では落札額4、5、6そして9番目のジュエリーもエリザベスのコレクションの一部として出店されていた。

落札額6番目は、 約600万㌦のサファイアのネックレス。このネックレスはブルガリ展のチケットの写真に使用されている程、まさにブルガリのデザインを象徴している。

1969年に制作されたこのネックレスは、 72 年のエリザベスの 40 歳の誕生日プレゼントとしてバートンから送られ た。 65 カラットのシュガーローフ・カ ボションと呼ばれる カットの施されたサファイアが中央に鎮座し、その周りに小さいダイヤモンドが敷き詰められ、さらにバゲットカットのサファイアが周囲を取り囲む。ブルガリスタイルの真骨頂ともいえる、大胆な色石使いと幾何学的なデザインだ。

中央のサファイアに施されたシュガーローフ・カボションを説明すると、カボションとは面の無いツルんとしたキャンディーの様なカットのことをいう。ただのカボションというとドーム型なのだが、シュガーローフとなるとちょっとアレンジが効いている。例えて言うならば、新鮮な卵の黄身の頂点を指でつまんだ感じで、横から見ると窪みがある。正面からだと石の高さが分からないが、横から見ると角が丸いピラミッドのような感じだ。サファイア のブルーは角度によって青空の様であったり、深海の海の様に変わる。

このネックレスとセットではないが、あたかもそう思わせるほどマッチしたデザインが、 22 カラットのサファイアの「トロンビーノ」 リング。トロンビーノとは小さなトランペットという意味だそう。中央のサファイアは同じようにシュガーローフカットで、約 90 万㌦で競り落とされた。

リングはネックレスよりも2年経ってから制作されたが、あたかも最初からペアの様な2つ。もちろん両方ともブルガリ社のデザインだから、それ程不思議ではないのかもしれな いが、石同士呼び合い、更にエリザベスを呼んだ気がしてしまうのだ。

続きはまた次回。

(倫子)

N.A.P. Staff
北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。