「Great American Eclipse (偉大なるアメリカの日食)」と名付けられた皆既日食が99年ぶりにアメリカを横断し、シアトルでも8月21日午前10時20分に92パーセントの日食が観測できた。
皆既日食とは、地球を公転している月が太陽と地球の間に入り、太陽・月・地球が一直線に並び、地球上の一部の地域で太陽が月の影で見えなくなる現象だ。日本神話の天照大神(あまてらすおおみかみ)の岩戸隠れも、皆既日食が原因だとの説もある。日本では、今回の日食は日の出前に起こるため観測できないため、アメリカで皆既日食を観測しようと多数のツアーが企画された。
アメリカが唯一の皆既日食の観測地となったのは1257年以来。今回の皆既日食は、オレゴン州の中部より南東方向に移動し、サウスキャロライナ州まで14州を通過した。アメリカ本土を横断するのも99年ぶりで、西海岸では38年ぶりの皆既日食。太陽の欠け始めから終わりまでに約1時間半かかった。平日の日中にもかかわらず、皆既日食を見るため100万人以上が車で移動すると見込まれたため、米連邦道路庁は「ここ数年で最大の交通の混乱につながりかねない」と注意を喚起していた。
当地ダウンタウンでは、ビルの屋上やテラスなどに観測用の眼鏡をかけた人々が集まった。珍しい皆既日食を一目見ようと、多くの従業員が昼間の勤務時間中に仕事を抜け出すことから、少なくとも全米で6億9400万ドルの生産性の損失が出るという推計が公表された。
マグノリア地区のジョン・ヴラスキャンプさんは、「家の近くで見たのですが、いつもならカモメがうるさいのに、あたりが急に静かになって、8パーセントの太陽は出ているんですが(注:シアトルでは92パーセントの日食のため)晴れているのに霧がかかったように薄暗くなり、別のプラネットに入ってしまったような感じがしました」と体験を表現した。ショアラインのゆかり・ベッテンコートさんは「あんなちょっとの太陽でずいぶん明るいんだなあ」と、思ったより暗くなくて「少し驚いた」そうだ。オレゴン州ニューポート西の農場で皆既日食を観測した新井和雄さんは、「すごかった。コロナもよく見えた。その瞬間辺りは夜みたいに暗くなり、急に寒くなり、不気味だった」と語った。
次回は2024年4月8日、メキシコから始まりアメリカ大陸を北東に進み、カナダ東部に達する。今回の皆既日食は多くの人にとって、北西部では一生に一度の貴重な経験だったようだ。
(天海幹子)