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セコ・ガーデン存続の可能性 日系人の歴史を残す私有日本庭園

取材・文:天海幹子

ベルビューのファントム・レイク湖畔にある私有日本庭園、「セコ・ガーデン」の存続危機について7月12日に同紙で取り上げて以来、売却話に興味を示す個人・団体が現れている。9月4日付の地元紙『シアトル・タイムズ』にも記事が掲載され、日系コミュニテイーから広く一般に知れ渡り、現在まだ市場には出ていないものの、庭園を存続させることを条件とした売却を希望する声が、支援団体「フレンズ・オブ・セコ・ガーデン」発足人の小林竑一氏に寄せられている。

セコ・ガーデンは元ブッシュ・ガーデン・レストランのオーナー、故ロイ・セコ氏と、その妻、ジョアン・セコ氏の邸宅内にある私有の日本庭園。同邸宅が2018年春にも売却される予定で、セコ・ガーデンが失われることが危惧されていた。存続可能性を探って支援活動を開始した造園家の小林氏は、「昨日は大勝利でした」と9月30日の同紙取材に対して笑顔で語った。

今年で80歳になるセコ夫人は、「昨年までは管理も少しはできたのですが、だんだん大変になり、今年売るつもりでいました。でも、もう1回クリスマスを過ごしてから」と、延ばし延ばしにして、来春に売却することを決めていた。夫のロイ氏の思い出や、ツールレイク強制収容から帰還した義父のカイチ氏による造園への思いをこれまで引き継いできたが、2.5エーカーもの庭園の管理は限界にきている。「売れてしまったら、さびしいでしょうね」。セコ夫人は前日の小林氏の説得で、夏までの3カ月間売却を延ばすことに同意した。小林氏は、「バイヤーを探すのと、市場に出すためのクリーンアップには、相当な時間が必要」と語る。出資可能な団体を探すため、10月には日本への出張も予定するなど意欲的だ。

セコ邸のベランダから庭園を眺めていると、第二次世界大戦中の日系移民が砂嵐が舞う砂漠の真ん中の強制収容所で、しっとりと雨の滴る北米への帰省を待ち望み、その後に夢を実現させた、その思いが伝わってくる。

「夫(ロイ氏)はワシントン大学の造園科で勉強したかったそうですが、父親の反対で断念したと話していました。あのころは、父親の意見が絶対でしたからね」と、セコ夫人。その話からも故ロイ氏の日本庭園への情熱が垣間見える。

売却となれば、バイヤーは庭園ツアー、結婚式等のイベント、エアビーアンドビーなどの宿泊施設としての賃貸も可能だ。しかし、これらの収入だけでは十分な庭園の管理は賄えない。「ある個人がいきなり10万ドルを寄付してくれたのです。これで、フレンズ・オブ・セコ・ガーデンを非営利団体(Friends of Saving Legacy of Seko Garden, FSLSG)にする資金ができました」と、小林氏はうれしい悲鳴をあげている。「セコ・ガーデンは、(日系人の)歴史の中でも重要な遺産」と、これからファンド・レイジングのため、各種団体に協力支援を求めるつもりだ。「まずは10月29日、9時から2時にクリーンアップ・パーティーをしようと思います。落ち葉かきでもいいですから、熊手と手袋、ゴミ袋持参で来てください」と、一般のボランティアを募っている。フレンズ・オブ・セコ・ガーデンに関しての小林氏への連絡先はこちら:kobayashik206@gmail.com。

 

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。