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シアトル所在の移民保護団体 司法省からの不法移民サポート業務停止命令が一時無効に

文:室橋美佐

5月17日、米国連邦裁判所は、司法省によるシアトル所在の移民権利保護団体Northwest Immigrant Rights Project (NWIRP)への不法移民サポート業務停止命令を、一時的に無効とする判決を下した。

NWIRPは、同月8日に、大手法律事務所であるDavis Wright Tremaine LLPと共に、地方裁判所に対して「司法省の業務停止命令は違法である」との訴えを起こしていた。本判決は、リチャード・A・ジョーン地方裁判官が、NWIRPからの告訴を受け入れたものだ。NWIRPは、国外強制追放を受けている不法移民に対して、法律的なサポートを提供している。

この判決を受けて、シアトル市長のエド・マレー氏はジョーン地方裁判官の判決に賛同する声明を発表した。市長は、声明の中で「弱い立場に立つ人々を攻撃するドナルド・トランプ政権の不法な大統領令が、この5か月間でいくつもなされてきた。しかし、今回も裁判官が大統領令に立ち向かう形となったのはありがたい事だ。」と伝え、シアトル市の「聖域都市」として立場を改めて示した。

NWIRPは、1984年の創設以来、米国全土で、低所得移民に対しての法律的なサポート業務を実施している。シアトル市の移民難民事務局(Office of Immigrant and Refugee Affairs (OIRA)も、当市の移民保護政策に関連し、トランプ政権大統領令への法律的な対策を巡り、同団体の協力を得ていた。

シアトル市移民難民事務局は、アフリカやアジア方面からの移民に対して、就職、言語習得、市民権獲得をサポートするプログラムなど、移民がシアトル市での生活に順応するための行政サービスを2012年から行っている。シアトル市は、米国内でも、より積極的な難民受け入れ政策を実施する行政区として知られ、トランプ政権とは、移民受け入れ政策を巡り対立している。

マレー市長は、昨年11月のトランプ氏大統領選勝利後直後には、シアトルが「今後も不法移民を保護する 「聖域都市」 であり続ける」と宣言した。また、今年3月には、「聖域都市」への連邦補助金を停止するとした大統領令は違憲だとして、連邦裁判所に提訴している。

今回の判決を受けて、マレー市長は、「シアトル市は、移民を引き続き歓迎していく。今後も変わらず、NWIRPのような団体と協力していく

北米報知社ゼネラル・マネジャー兼北米報知編集長。上智大学経済学部卒業後、ハイテク関連企業の国際マーケティング職を経て2005年からシアトル在住。2016年にワシントン大学都市計画修士を取得し、2017年から現職。シアトルの都市問題や日系・アジア系アメリカ人コミュニティーの話題を中心に執筆。