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変わるベルビュー ~ベルビュー市シティー・マネジャーにインタビュー

変わるベルビュー

ブラッド・ミヤケ氏は、市長と市議会議員からの任命を受けて市行政を取り仕切る、ベルビュー市の日系アメリカ人シティー・マネジャー。ベルビューがこれからどう変わっていくのか、話を聞きました。(取材・文 室橋美佐)

2023年のライトレール開通に向けて、駅や鉄橋の建設工事があちこちで見られるようになったベルビュー市。シアトル都市圏のベットタウンとして1953年に誕生した同市は、1980年代からダウンタウン商業地区の開発が進み、州内でシアトルに次ぐ中心都市に成長した。

「ベルビュー市は、ここ数十年で急激に『都会』としての側面を持つようになりました」と、ブラッド・ミヤケ氏は話す。「1990年の時点では人口の約85%が白人住民という、典型的なアメリカ郊外都市の人口構成でしたが、現在では半数以上がアジア系を中心とする非白人住民で、また約37%がアメリカ国外出身です」と、ベルビュー市がダイバーシティに富み、国際色豊かな都会へ変化していることを語る。「リンク・ライト・レールが通れば、ダウンタウンの様相はさらに変わるでしょう」

高層オフィス・ビルやコンドミニアムなど次々と開発が進んでいるダウンタウンに続いて、次の10年では、リンク・ライト・レールがマイクロソフト・キャンパスへ向かう途中にあるベルレッド地区の開発が計画されているという。

ダウンタウン・パークの拡張工事で2017年6月に新しくオープンした「インスピレーション・プレイグラウンド」。夏場には一角がスプレー・パークとなる。プレイグラウンド工事には、住民団体が約500万ドルの募金を集めた

「シティー・イン・ア・パーク」のビジョンを長年掲げてきたベルビュー市は、公園、森林・水辺区域、ハイキング・トレイルなどの拡充に力を入れており、約100の市営公園がある。ダウンタウン・パークの拡張も済み、ベルビュー・スクエア付近からオールド・ベルビューまで、公園の歩道でつながった。「イノベーション・トライアングルという、ハイテク分野の雇用をイーストサイド地域に確保するためのパートナーシップを、ベルビュー市、レドモンド市、カークランド市で結んでいます。誘致競争ではなく、近隣の市と協力して、グローバル企業や優良スタートアップ企業の確保・誘致・育成ができるよう動いています」と、ミヤケ氏。快適な住環境と雇用機会を求めて富裕層が集まるベルビュー市は世帯所得中間値が約10万ドルと、アメリカ国内中間値の5.5万ドルのほぼ2倍だ。

一方で、増える人口と雇用による不動産価格の高騰、交通渋滞など、市にとっての課題も少なくない。多様なバックグラウンドを持つ住民に対応するため「歓迎する体制」を整えており、多言語での窓口対応やカルチャー・イベント開催も積極的に行っている。市の統計によれば、ベルビュー市内の42%の住民が自宅で英語以外の言語を話し、ベルビュー学区に通う子どもたちが英語以外で話す言語は94種類にも上るという。

交通渋滞については、約550万ドルを投じて、SCATSと呼ばれるハイテク信号機システムを2010年から2016年にかけて市内の全信号機に導入した。車に頼らずに移動できるよう、リンク・ライト・レールやバスなど公共交通機関へのアクセス、歩道・自転車道を整備している。「ベルビューは高所得者層エリアと考えられがちですが、ホームレス家庭や、無償の学校ランチ・プログラムを必要としている子どもの数も多いのが現状。そうした低所得家庭の子どもたちのサポートも欠かせない部分です」と、最後に締めくくった。

ブラッド・ミヤケ(Brad Miyake)■日系3世としてシアトルで生まれ育つ。父方家系は広島、母方家系は長野出身。ワシントンン大学のビジネス・スクールを卒業後、キング郡勤務を経てベルビュー市役所へ。2006年から副シティー・マネジャーを務め、2014年から現職。

 

???ベルビューにまつわるトリビア???

「人口の約半分が外国人!?」
ベルビュー市の2016年時点の人口は約14万人。人口は1990年の約8.6万人から右肩上がりに増え続け、特にダウンタウン内の人口は、2010年には約7,000人だったが2016年には約1万4,000人となり、倍増している。人口の半分を占める非白人住民のうち、3分の1がインド系、3分の1が中華系、11%が韓国系、6%が日系だ。

「ファクトリアにウサギ缶詰工場!?」
戦前は日系移民農家が営むイチゴ畑が広がっていたベルビュー。現在
のファクトリア周辺にはウサギの毛皮や食用缶詰工場があった。ワシ
ントン湖を東西に渡る浮橋(現在のI-90ブリッジ)が1940年に建設されてから、ベッドタウンとして人口が増え始める。1941年から1945年までの日系移民強制収容で、立ち退いた土地を開発業者が安く転用できたことも都市の成長につながった事実もある。

 

気になるリンク・ライト・レール

リンク・ライト・レールのイーストサイド拡張で新設される10駅のうち、6駅がベルビュー市内に建設される。昨年から本格的な工事が見られるようになり、道路が通行止めになるなど不便を感じることも。サウンド・トランジットによれば、2022年には工事は完了し、同年後半には試運転を開始するという。イースト・リンク・エクステンション情報

ウィルバートン
116th Ave. NE.とNE. 8th St.が交差するホールフーズ裏側に建設。駅からオーバー・レイク・ホスピタルへの歩道も整備される予定。

スプリング・ディストリクト/120th
スプリング・ディストリクト再開発エリア内に建設される。駅周辺には、REI本社オフィスが入居予定のオフィス・ビル、グローバル・イノベーション・エクスチェンジの大学院キャンパス、アパート、店舗などが集まる計画。

ベルレッド/130th
Bel Red Rd.とSR 520に挟まれるベルレッド区画内の中心に建設される路面駅。

ベルビュー・ダウンタウン
ベルビュー市役所ビル横に2023年オープン予定。マイクロソフト・キャンパスがあるレドモンド・テクノロジー駅まで約10分、ワシントン大学駅まで約30分、シータック国際空港駅まで約1時間の乗車時間が見込まれている。

サウス・ベルビュー
現在のサウス・ベルビュー・パーク&ライドがある場所に、1,500台の駐車スペースとバスのトランジット・センターを含む大型の駅が建設される。

イースト・メイン
112th Ave. SE. とMain St.の交差点の路面上に建設。

北米報知社ゼネラル・マネジャー兼北米報知編集長。上智大学経済学部卒業後、ハイテク関連企業の国際マーケティング職を経て2005年からシアトル在住。2016年にワシントン大学都市計画修士を取得し、2017年から現職。シアトルの都市問題や日系・アジア系アメリカ人コミュニティーの話題を中心に執筆。