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日本とアメリカを音楽でつなぐ祭典、ミュージカル・ブリッジ開催

シアトル日系人会の資金集めとして始まった音楽の祭典、「第6回ミュージカル・ブリッジ」が11月18日、レントン市のイケア・パフォーミング・アーツ・センターで開かれる。今年はニューヨークから尺八奏者のマルコ・リーンハードさん、「トイレの神様」でおなじみのシンガーソングライター、植村花菜さんに加えて、ローカルではエバン・ヤナギダさんとチカさん、ソングス・オブ・ホープの指導による、めぐみ保育園とジョン・スタンフォード・インターナショナル小学校日本語クラスの児童たち、と盛りだくさんの出演者だ。

マルコ・リーンハードさんは1981年、スイスから日本に留学し、その後「鬼太鼓座」に入り94年まで籍を置く。その間尺八に魅了され、故・横山勝也氏、古屋輝夫氏に師事する。95年にニューヨークで「太鼓座」を創立し、世界各国で3,000以上のコンサートを開く。「鬼太鼓座」は佐渡島から長野、長崎に移り、「田(でん)先生に『尺八は4畳半の部屋で練習するものではない』と言われ、雲仙の山の中では雨、風、霧の中で稽古をしました」とブログで語る。「尺八の魂というのは息継ぎ(ブレス)にあり、節と節の間のブレスの音がダイナミックに積み重なり、それが音を通して、ストーリーとなって伝わる。

シアトル日系人会は1901年に日本人(にっぽんじん)会として発足し、1956年に有志が一部の反対を押し切り、日本語国語学校を現在の場所に設立した。戦時中に苦労した移民の1世は日本語を守りたいが、親の苦労を間近に見て育った2世はアメリカ人として生きていく。また自分のアイデンティティーとして祖父母の日本を受け入れる3世と、世代によって見方の違いはあるが、日系人会を維持しているその根本は「私たちは日本とアメリカの友好関係を保ちたい。ここに住む人たちに日本語教育を通して日本を理解してもらい、エンターテインメントとして日本文化を紹介できればうれしい」と、日系人会会長の田原 優さんは穏やかに力説する。絵画など眼に訴える日本文化に対抗する、耳に訴える文化としてのミュージカル・ブリッジ。日系人会の信条の「融和」と「調和」がどんな音として心に響くか期待される。収益金は主に日本語学校の維持費に使われる。

(文:天海幹子)

東京都出身。2000年から2004年までジェネラルマネージャー兼編集長。北米報知100周年記念号発刊。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。