by 佐々木 志峰
最近になって、あまりに対照的な米国を目にした。
久しぶりにポートランドに行く機会があったときのこと。車を走らせていると、目を疑う光景が視界に入ってきた。道路にできたホームレスの集落。テントもあるが、多くは乗用車やキャンピングカーが道脇に並ぶ。ゴミも散乱し、車の多くは傷んでいる。
そう遠くないところにも同様の形で車が置かれ、ホームレスが生活している場所が点在していた。何年も前のことだが、本紙の取材でポートランドを回り、その際に関係者からホームレス問題が顕在化していると聞いたことを思い出した。それでも、この光景はあまりに異様だった。
仕事先で話を聞けば、この集落は新型コロナウイルスの感染拡大後に増え始め、減る気配が全くなかったという。自治体も対応に当たっているが、一向に追いついていないとのことだった。「政治」ではどうにもならないという声も。この道路の集落の片脇は9月半ば過ぎに撤去されたことが伝えられた。
その衝撃を受けてから、米中部のアーカンソー州に向かうと、ここでは別世界が広がっていた。
初めて訪れた仕事先の街は、10年以上前はほぼ何もない平原だったそうだ。某企業を中心にコミュニティーを作り、周辺には関連企業のオフィス、新しいショッピングモールや娯楽施設、コンドミニアムや住宅地が並んでいた。まだまだ建設が進められているそうで、同業者からは「毎年街が大きくなっている」との声。それ以上にポートランドとのあまりのギャップに驚かされた。
ホームレス問題はシアトルもポートランドと似た状況にある。地元テレビKING5によると、キング郡の野外生活者は7,500人になるという。自治体も対応に動いており、インターナショナル・ディストリクトの南端通りの向かいにホームレス施設を拡張する計画で、同地の住民たちから懸念の声が上がっているようだ。
街の成長と、そこに密接する様々な問題。2つの対照的な街から戻り、複雑な思いばかりが頭に残り続けている。