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蘇る記憶、イチローコール〜一石

by 佐々木 志峰

シアトルで何度も耳にした、忘れることのない大声援。「イ・チ・ロー」、「イ・チ・ロー ーーー」。
大画面で紹介された走攻守にわたる華やかなプレーの数々。2001年、04年、07年、12年、18年、19年……。「マリナーズ・イチロー」の一挙手一投足に心を躍らせた日々が蘇ってきたのではないだろうか。
マリナーズで10人目の球団殿堂入り。大リーグの球団で日本選手として初の快挙となる。
シアトルが誇るレジェンドの人気ぶりは不変だ。式典翌日。先着2万人にイチローさんの記念首振り人形が配られたが、球場の周りには開場前から長蛇の列が幾重にもできあがった。日本から米国に渡った大リーグ1年目。快進撃を続けるマリナーズの中心にあり、大ブレークを果たしたイチローさんの首振り人形を求めて大行列となった、あの当時が思い起こされた。
野球以外での功績も計り知れない。
シアトルのコミュニティーとしては、ここまで日本との関係を身近にしてくれた「親善大使」はいないだろう。米西海岸に位置し地理上では日本に近いが、人口の面からもロサンゼルス、サンフランシスコなどに後塵を拝してきた当地。21世紀に入って毎日のように日本でマリナーズの試合が伝えられたるようになり一気に有名都市へ。イチローさんが躍動するたび、「シアトル」の存在は日本にますます近くなった。
現在は球団会長付特別補佐兼インストラクターとしてチームをサポート。マリナーズ入団の1年目だった2001年以来のプレーオフ進出を目指し、若い選手たちとともに戦っている。選手からあふれ出る力に手応えを示し、「選手の時とは違ったプラスのポジティブなエネルギーを持ちたい」と自らの鍛錬も欠かさない。
球場の端から端まで観客で埋め尽くされた日々。あれから21年。再び戻ってきた熱気を身に受け、マリナーズが再びシアトルの「顔」となる日も近いと実感できる。
イチローさんの球団殿堂入りの記念盾は8月28日にT−モバイル・パークにあるマリナーズ殿堂に飾られた。次は2025年。米野球殿堂への選出も確実視されている。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。