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この頃の話題〜一石

By 佐々木 志峰

車を走らせていて新しく建ったアパートを目にし、同乗者とその賃貸価格を調べて驚愕する。歯医者に行けば、最初に出た話題が住宅ローンの金利。別の場では卵の値段だろうか。たわいのない会話で、こうしたトピックに接することが多い。

近年の仕事の関係で、ドル円の為替をこれまで以上に注目するようになった。円安に大きく振れた2022年は、筆者自身、少なからず影響を受けた1年だった。

それ以前から円安の流れにあったが、大きく動いたのは昨年の春後半だったと記憶している。5、6月の出張現場で為替が話題になった。1ドル130円を超えていた。その同業者と次に会ったのは9月中旬。1ドルは140円台へ。顔を合わせるや、驚きを共有するしかなかった。

出張先のテキサス州ヒューストンでのこと。配車サービスを利用した時に運転手からシアトルの生活について聞かれた。「何でも高い」と答え、人口が増えているテキサス州は魅力的で暮らしやすさがあるのでは、と羨望の声を返した。

「シアトルの最低賃金はいくらですか」と質問を重ねてきた。ワシントン州は時給15・74ドルとされている。シアトルは16・50ドルから18・69ドル。運転手によると、ヒューストンの最低時給は7・25ドルだそうだ。「人は移ってくるけれど、この賃金では暮らせない」。聞けば、この運転手も仕事を掛け持ちしながらの生活だという。

ふと目に入ったガソリン価格は、当地と比較するとはるかに安価。それでも、「昔は1ガロン1ドル以下だったんですよ」との言葉。思い返せばその通りだ。1ガロン3ドルを超えた15年ほど前の衝撃も記憶に蘇った。自動車の燃費も変わっており比較は難しいが、「もう昔のようには戻らないですから」――。ポツリとつぶやく運転手の声に、うなずくしかなかった。

今年もあっという間に2カ月が過ぎようとしている。そして来年は大統領選挙。選挙争点はさまざまあっても、経済状況が結果の大きな要因となることは変わらない。来年へ向けて、流れの良い1年になってほしいと単純に願うが、果たして。

 

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。