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追悼日〜一石

By 佐々木 志峰

太平洋に面するワシントン州西海岸を最後に訪れてからしばらく経つ。

ふと景色を思い返していると、同地を震源とする大地震から323年が経つとの記事が目に留まった。1700年1月26日。太平洋沿岸部をカナダ・バンクーバー島から北カリフォルニアへ600マイル以上にわたる断層が引き起こした大地震。推定マグニチュードは8・7から9・2だったという。

323年前を残す記録は多くない。だが、地震でダメージを受けた太平洋沿岸地域は貴重な情報をもたらしてくれる。海へ流れ込むコパリス川にある「ゴースト・フォレスト」はその筆頭だろう。

太平洋沿岸を走る州道脇からカヌーで川を上る。やがて枯れ木が立ち尽くす一帯が見えてくる。その土層を見てみると、海面より高い海抜ながら、海の砂が入り込んで層を成していた。大地震で地盤沈下が起こって海水が入り込んだのか、あるいは大きな津波となって押し寄せたのか。塩を含んだ砂が入り込み死んだ森は、300年経っても蘇らずにある。

このカスカディア地震は、すでに周期に達しているとされる。もちろん次の発生時期を予測することはできないが、関係者は1月26日を喚起の日として備えを呼び掛けている。1月17日はシアトルの姉妹都市、神戸が被災地となった阪神淡路大震災から28年。そして3月11日は東日本大震災から12年となる。防災、減災の取り組みは無駄にならない。

追悼日としては1月26日の翌日が、ユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の犠牲者を追悼する国際日だった。だが当日にエルサレムで銃撃事件が発生した。暴力の連鎖。米国でもカリフォルニア州での乱射事件が続き、銃関連犯罪は深刻化の一途をたどる。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻から間もなく一年となる。その前の2月19日には、日系人強制退去につながった1942年の大統領令9066号発令にあたるデイ・オブ・リメンブランスを迎える。シアトル地域の人々が送られた集合施設のあったピュアラップなどで、関連行事が予定されている。

考えさせられることが、一日、一日と続いている。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。