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意外と危険⁉〜地球からの贈りもの、宝石物語

米国議会議事堂に対する1月6日の攻撃を調査する、米国下院特別委員会の公聴会。副委員長のリズ・チェイニー氏は初回と2回目の公聴会には星の形のピアスを着用していた。写真を拡大してみると、ラウンドのダイヤ5つを星型に配し、中央に小さなダイヤで隙間を埋めている様なデザインだ。左胸元のピンは、デザインは分からないものの、リズの愛国心を表すようなモチーフではないだろうか。

政党うんぬんを抜きにして、彼女の信念、愛国心、正義感というのは今の世の中、特に政治の世界で稀であろう。政治家としての立場は、今とても厳しいものとなったにも関わらず、それでもなお信念を貫く彼女を見る度に心からの喝采を送らずにはいられない。

前座が長くなってしまったが、今回はジュエリーと怪我について。5月11日に国際自動車連盟(FIA)がF1競技中の身体穿孔(せんこう)(ピアス)と金属ネックチェーン型のアクセサリー/ジュエリー禁止と、耐火性下着の着用の取り締まりを強化するとした(結婚指輪は可)。それにルイス・ハミルトン選手が猛反発したことがニュースになった。鼻ピアスをしているハミルトン選手だが、とりあえず今期は着用が認められたとある。外したくないハミルトン選手の気持ちも分かるが、事故の折に救助の妨げになるなど、金属が皮膚に直接触れている場合の火傷などについて心配する側の気持ちも分かるので、難しいところだ。

直接他人と接触するサッカーやラグビーなどは、結婚指輪を含むすべてのジュエリーが禁止。渡米した頃は、多くの女性が立て爪のダイヤモンドの指輪をはめたまま赤ちゃんを抱っこしたり幼子と遊んだりする姿を見て、「危なくないの⁉」と驚いたものだ。子どもは急な動きをするから、あの立て爪に思いっきり当たってケガをすることだって少なくないはず。

ジュエリーの事故やケガを調べてみると、圧倒的に多いのは指輪によるもの。指輪剝離というケガがあり、調べると結構メジャーな様子。2015年にトゥナイトショーの司会者のジミー・ファロン氏がこのケガで「6時間の手術をした」と左手薬指にこんもりと包帯を巻いて報告したことがあった。指輪がキッチンカウンターの端っこに引っかかり、そのまま転んだ時に指が剥離したらしい。当初本人はそんなに大事だとは思わなかったらしく、病院で医者に「指を切断しなければいけないかも」と言われ、初めて事の重大さを知ったそう。指輪が引っかかって圧力が掛かった時に、神経、毛細血管、筋肉などが剥離してしまうという実は怖いケガで、そんなに珍しいものでないらしいことも、また驚きだ。

指輪に関しては工場などでの事故も多い。機械にハマって、そのまま指(手)が持っていかれる、電気ショック、熱損傷など。分かりやすくたとえるなら、小さな雷が指輪に落ちる感じだろうか。ジムなどでのワークアウトでも、ウェイトを手から離したら指の皮がズルっと一緒に剥けたという話をスポーツ系雑誌で読んだことがある。

運動と指輪に関して、私もひとつ話題が。ここ数年、これから長く続けられる趣味を探していたのだが、遂に見つけた。それはボルダリング。200㌦の専用靴も買い、簡単に辞められないと腹を括った。このボルダリング、手を粉まみれにするというのもあるし、浮腫むということもあるが、何しろ登る時に壁の突起に勢いよく掴まるので、そこに指がガツンガツン当たる。よって指輪は外さなければならないと気づいた。運動する時のみ外してロッカーに入れておくという手もあるが、終わってもしばらく浮腫みが取れないし、紛失などの心配を考えると、家で外していく事にした。指輪をしていない自分の手は、何だか裸でいるような感覚。常に身についているようなジュエリーを外すというのは、何とも心許ないのだ。

1カ月ほど前、29年振りに左耳に追加でひとつだけ開けたピアス。それは何だか運命の様な気もしてきた。指輪の代わりに、耳にお気に入りをもうひとつ追加というのも新たな楽しみかも。

80年代のアメリカに憧れを抱き、18歳で渡米。読んだエッセイに感銘を受け、宝石鑑定士の資格を取得。訳あって帰国し、現在は宝石(鉱物)の知識を生かし半導体や燃料電池などの翻訳・通訳を生業としている。