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ラビング・デー

まだ肌寒さを感じるシアトルだが、初夏を感じさせる華やかな行事が週末に開かれている。シアトルをはじめ、全米各所で性的マイノリティー者への平等の権利を求めるイベントが6月11日に開かれた。24日には恒例のシアトル・プライドパレードも行われる。

イベント翌日12日は、異人種間結婚を讃える「ラビング・デー」だった。黒人女性のミルドレッド、白人男性リチャード・ラビング夫妻が50年前、最高裁で異人種間結婚の権利を勝ち取った。当時は米国南部を中心とした16州で異人種間結婚が違法とされていた。

公民権運動が活発になる時代。ワシントン州では同じ頃、外国人土地法がようやく撤廃された。移民を含め、一般市民への権利にも障害を及ぼす事項の数々が、当然のごとくあったことに驚きを隠せない。

ラビング夫妻の判例は、近年の同性婚の是非を問う裁判にも引用されている。「プライド」関連のイベントが開催される6月は、平等な権利をアピールする重要なひと月となる。

ラビング夫妻の勝利から50年。ABCニュースによると、国際結婚を含めた異人種間結婚者は米国内で10%、直近での結婚については17%になるという。現在の日系を含めたマイノリティーグループから見れば、この数字は小さいかもしれないが、当時と比べれば大きな変化だろう。一方で2013年のギャロップによる世論調査では、11%の米国市民が異人種結婚を認めていないとのデータもあるという。

米国社会における異人種間結婚の一例としては、第二次世界大戦後のいわゆる「戦争花嫁」も挙げられる。さらにさかのぼること20世紀前半には、日系移民の男性と白人女性との婚姻が論議を巻き起こした。当カップルは反対する人々にカリフォルニア、オレゴンから追われ、北上の末にシアトルの地で結婚できた。白人社会のみならず、日系社会からも認められなかった当時。時代と言ってしまえばそれまでだが、現在にも重要な教訓として伝わる。そのストーリーは親戚のひとり、ブレンダ・ウォン・アオキさんが演劇『軍次郎叔父さんの恋人』としてたびたび紹介、シアトルでも2年前に上演されている。

佐々木志峰
オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。