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IDにあった集落

インターナショナル・ディストリクトへ足が遠のいてから久しいが、地元メディアのある記事に目が留まった。同地区の南端を走るディアボーン・アベニューと13番アベニューとI5の間のホームレス集落の撤去が行われたという。

 かなり前になるが、丘の傾斜を利用した空き地に突然と集落ができた頃を覚えている。インターナショナル・ディストリクトのみならず、市内各所でホームレスの問題が顕在化したころで、衝撃を覚えた記憶がある。見た目には立派な集落。その後、大きな撤去作業があった。

 かつての状況を見てきた関係もあるのか、仕事で他都市に足を運ぶと、やはりホームレスの存在が気になる。自身の経験からもそうだが、訪問者に街の印象を決定づけさせてしまう一因となる。出張から戻ると、他都市のホームレスの状況について尋ねられたこともあった。

 さて、この集落跡地だが、市警発表によると、24人が生活していたという。一掃された後にまた戻ってきたのだろうか。記事で目を引いたのが、パイオニアスクエアからインターナショナル・ディストリクトにかけて、ホームレスの集落がドラッグ関係者につながりがあるということだった。捜索の結果、ビーコンヒルに活動の拠点がある人物など、逮捕者も出たという。集落からは本物、偽物の銃、ナイフ、マッチ、刀に加えてドラッグや2万ドル以上になる現金が見つかったとある。

 まずは清掃した後、土などを新たに盛って土地を整え、地元関係者らと今後の土地の使い道を探っていくとのことだ。しかし、再活用への課題も多い。この場所はI5の乗り口に近く、ディアボーン・アベニューが走る以外は何もない。この南側はI90が走り、こちらも緑に覆われホームレスが集落化していた記憶がある。斜面があって高速道路が横を走り、12番アベニューの高い橋がそびえる。北側にはアパートも建つが、今後どのような利用ができるだろうか。

 立地としても非常に難しい場所だが、まずは犯罪の手に利用されるのはごめん。うまく地区の発展につながるよう、地元関係者で話を進めてもらえればと思う。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。