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第47回「継続顧客になる」ということ

先日、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)の会員であるリサイクル店の店主から、こんなご報告をいただいた。同店、ネット専業で実店舗はないが、ある日お客さんから電話があり出ると、「近所に来ているのですが、お店はどこですか?」との声。しかもそのお客さんは当地の方ではなく、旅行中。せっかくなのでと玄関先での立ち話のような応対にはなったものの、しばし歓談し、そのお客さんは満足して帰られたとのことだった。

ネットを利用するリサイクルやC to C売買のプラットフォームには今や様々なものがある。それぞれが機能を競い、利用者は同じものを買うなら安いところをともなるので、機能競争や価格競争になりやすい。そのようなビジネスである同店だが、ワクワク系の実践をちりばめていくなか、最近、「よそが半額で売っているような商品を、割引率が低くても買ってもらえるようになった」と彼女が言うような現象も起こり始め、今回の出来事となった。

では、彼女は今どんなことをやっているのか。それらは多岐に渡るのでここでは先のお客さんの言葉を紹介するが、そのお客さんはわざわざ旅行中に来店した理由を、こう語った。「同封したニューズレターや梱包材に書いた手書きのメッセージなどの雰囲気が気に入って」。そして、以前同店で購入したバッグを誇らしげに見せ、そのバッグから件のニューズレターと梱包材を、嬉しそうに取り出して見せたのだった。

これをあなたはどのような現象と捉えるだろうか。繰り返すが、同店に実店舗はないし、普段お客さんに会うこともない。それでもこのお客さんは会いに来たのであり、実際に実店舗はなかったが、満足して帰られた。ここで言いたいことは、「ネットショップも実店舗を作り、接客すべき」ということではもちろんない。同店は今この方のような顧客が増えてきているが、このような絆はこのお店の継続利用につながる。この、「顧客の継続利用」と「継続利用客の増加・維持」こそが商売の要であるということだ。しかもその理由は「便利」「安さ」だけではないところに今、多くのビジネスパーソンにとってのビジネスの可能性がある。

そして彼女は今回、リアルにお客さんと接することができ、明確な顧客像がひとつ描け、これは大変有力な情報だったと語るが、これも大切なことだ。継続利用してもらいたければ、お客さんにとって価値ある存在でい続けなければならないが、そのためには、お客さんのことも知らなければならず、自社の客像(「客層」でなく「客像」) を明確に描けることはとても重要だ。そのことも忘れないでいただきたい。

(小阪裕司)

小阪 裕司
山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。