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自然の力

秋色に深まった当地。季節の味覚も地元マーケットにあふれる。日系社会の食卓を彩る松茸も例外でなく、最近あった食事会の席でも一品が出された。どこで採れたのか聞くと、ワシントン州で地元産とのこと。今年の収穫は良好とのことだが、やや香りが弱いという話だった。

 松茸の収穫量には周期のようなものがあると聞く。もちろん天候や場所で香りや味覚も変わるだろう。ふと15年ほど前の大収穫の年が思い出された。行く先々で関係者が見せる誇らしげな顔があった。小さいながら本紙で開いた松茸大会も記憶に新しい。参加者が持ち寄る巨大な松茸の数々にオフィスは大盛り上がりだった。

 自然の恵みを享受する中、その力に畏怖の念も改めて覚える。日本を襲った台風19号では筆者の生まれ故郷も被害を受けた。主流河川と小さな川の合流地点となり、増水で避難勧告が出され、その後、氾濫のニュースが報じられた。氾濫地点は筆者もよく知る河川敷への出入り口。堤防を欠いた脆弱な場所で土嚢の防災が及ばなかったようだ。

 かつて大型台風が襲ってきた記憶はある。それでも大雨の増水などで住宅区域に氾濫の危機が迫ったことはなかった。今回の台風による増水では、近年の再開発で建てられた堤防によってさらなる大規模水害が防がれたとも聞く。筆者が体験してきた気象状況と異なり、現在の日本は大きく姿を変えてしまったことがはっきりと理解できた。

 当地はどうだろうか。この原稿を書いているこの数日は雨が続く。最近の印象として、激しい雨が時折地面を叩きつけることがある。確かなデータはないが、このような強い雨が増えている印象を覚える。

 アメリカ海洋大気庁(NOAA)は17日、今冬の米国の天候予測を発表した。例年より暖かく、雨量はやや増える可能性がある地域もあるとしている。ワシントン州をはじめとするノースウエストはやや暖かく、雨量は例年通りという。穏やかな予測に一安心だが、備えは忘れずしっかりと冬を迎えたい。 

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。