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日米の線の数々

2016年の始まりとなり、コミュニティーでは新年会が毎週末に開かれる時期となった。またこの時期日本とのつながりといえば、シアトルに縁ある神戸の大地震から21年。3月には東日本大震災から5年とあり、地元関連行事の情報なども出てきている。

先週号で紹介したが、ノースウエストで発生した大地震の歴史資料をもとに日米の関係を描いた『みなしご元禄津波』が再版された。23日、24日には東日本大震災による津波から生まれた日米の交流のストーリーを描いた子供向けの日英両語絵本『The E x t r a o r d i n a r yV o y a g e o fKamome( いつまでもともだちでいようね)』のブックイベントが開かれる。

被災地陸前高田の船がカリフォルニア州のクレセントシティーに漂着したことで始まった両市の交流を描く。イベント詳細に関してはカレンダーページで見ることができる。

決して起きてほしくない大災害だが、様々な形で海を挟んだ両国の人と人、町と町が絆を深め合ってきた5年だったといえるだろう。年齢を問わず、日米間における交流プログラムも活発に行われるようになった。

全米各地の日系社会の代表者が参加する日本外務省主催、米日カウンシル運営の日系人リーダー招へいプログラムは、今年も10人が参加する。行き先は東京、神戸になる。40代から50代の三世、四世がメインで、これまでに176人が参加という。

こうしたプログラムは継続が最も大切で難しいところだが、確かな成果が出ているからこそ続いているのだろう。これに派生する形で、アジア系政治家や、若い世代へ向けた日本との交流プログラムも実施されている。

本紙ではほとんど扱うことができず残念だったが、オレゴン州沿岸に漂着、ポートランド日本庭園に保管されていた神社の鳥居は、昨年無事に青森県へと送られ修復されたという。上記の絵本と同様、震災という悲劇が生んだ縁だが、それでも確実な「線」がコミュニティー同士で温められてきた。

今年もまた色々な日米交流の姿を目にするだろう。当地だけでなく、様々な地で新たな線が生まれることを期待したい。

(佐々木 志峰)

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。