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敬老ノースウェスト、シアトル敬老を閉鎖へ

シアトルの日系人向け非営利高齢者ケア団体である敬老ノースウェストは、5月8日、同団体が運営する敬老リハビリテーション・ケア・センター(シアトル敬老)や在宅介護など複数のプログラムを年内で終了することを発表した。増大する運営コストに対し 、政府補償の不足による資金繰りの悪化が原因。なお、系列施設であるアシステット・リビング・ホームの日系マナーと、デイケア・プログラムの心会は引き続き運営される見通しだ。

敬老ノースウェストは1975年、本誌発行人であるトミオ・モリグチらを中心とした日系2世によって、非営利団体1世コンサーンズとして設立された。高齢化した日系1世コミュニティーをサポートする、日系の文化的背景を尊重したケア施設が必要と考えられたためだ。、翌76年にはシアトル敬老ナーシング・ホームをサウス・シアトルに開所。高まる需要に応え、85年にリハビリテーション・ケア・センターのシアトル敬老をスタートさせた。その後、日系マナー、生涯学習プログラムの日系ホライズン、在宅介護、心会、送迎サービス、ケータリングの6つの部門へと拡張。その中心施設であるシアトル敬老は旧日本町に施設を構え、約120名の居住者を抱える。今回の閉鎖は、利用者や勤務者へ大きな影響を及ぼすことになる。初代CEOであるモリグチは今年1月から選出される形で再び理事を務めた。「継続のため、あらゆる努力をしたが、現在の経営状況の中では極めて難しい。非常に残念だ」と、苦しい胸の内を語る。そして、現居住者の約3割は年内に移転先が決まらない可能性があることにも言及した。

公的な介護保険制度のないアメリカでは、ナーシング・ホーム入所費用を高齢者、障がい者向けの医療保険であるメディケアと、低所得者向けのメディケイドに頼らざるを得ない。しかし、2008年の金融危機以降、連邦政府はこうした公的保険制度の予算を削減している。加えて、医療費の高騰や最低賃金上昇 もあり、ナーシング・ホームの経営を維持することは困難となってきている。事実、2018年にはワシントン州だけで13のナーシング・ホームが閉鎖された。

これまで、日系人を含め2万人を超えるシアトルの高齢者をサポートしてきた敬老ノースウェスト。今回の決断によって、 シアトル最古のアジア系高齢者ケア施設、シアトル敬老はその40年以上 の歴史に幕を下ろすこととなった。一般へ向けての説明会は5月14日午後6時よりマーサー・アイランドのストロウム・ジューイッシュ・コミュニティ・センターにて行われる。

(加藤 瞳)

 

東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨーク市立大学シネマ・メディア・スタディーズ修士課程を経て、2019年より北米報知社編集スタッフ。元バリスタの経歴が縁でシアトルへ。現在 シアトルまでフェリーで通勤中。