Home コラム 一石 20年代のシアトル

20年代のシアトル

 近隣を散策すると住宅販売の看板が目に入る。価格高騰となって久しいが、購買意欲は衰えていない模様。週末に見学に来る家族の姿も見られる。州外への引っ越しのため最近になって住宅売却を決断した知人のもとには、すぐに購入のオファーが来たという。

 地元メディアのKOMOによると、シアトル地域での住宅売買は販売開始から売り手が見つかるまで平均6日で、中間価格は88万ドルを超えるという。賃貸については、ベルビューの1ベットルームの平均家賃が2500ドル。昨年から20%増だそうで、ただ驚きでしかない。

 シアトル・タイムズ紙はキング郡の住宅価格について、先月中間値で99万5000ドルと伝えていた。35歳段階での住宅保有者と賃貸者の割合を10年ごとのデータで紹介していたが、その数字が興味深い。1960年当時は35歳の48%が住宅を保有していたという。2020年にはこの数字は24・1%まで減少。相対的に賃貸者の割合が増えた。

 住宅所有に関しては、価格の面だけでなく世代ごとで考え方も異なるだろう。IT企業の隆盛で街も変わった。キャリアアップとしてのシアトル。賃貸率の高まりは流動性が生んでいる点もあるのだろう。

 インフレを含め、熱を帯びるのは価格だけではない。スポーツ面もシアトルは上昇段階にある。サッカーのシアトル・サウンダースは今月、北中米カリブ海のクラブトーナメント、CONCACAFチャンピオンズリーグを制した。米国メジャーリーグのサッカーチームとして初優勝。クラブ世界一を決めるFIFAクラブワールドカップへの出場権も手にした。

 この躍進で期待されるのが、米国・カナダ・メキシコの共同開催となる2026年のサッカー・ワールドカップ。試合開催の都市としてシアトルも候補に挙がっている。開催都市の発表は6月頃になるとも伝えられるが、本拠地ルーメン・フィールドに6万8741人を集めた熱狂ぶりは、招致へ向けて強力なアピールとなった。

 野球の大リーグも来年にシアトルでオールスターを開催する。内外に活況を呼ぶスポーツ行事もあり、当地の前進はこの20年代も止まる気配はなさそうだ。

                    (佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。