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桜の開花

 シアトルの春を彩る桜の季節を迎えた。桜の種類によって開花時期をずらし、これから何週にもわたって地元市民の目を楽しませてくれるだろう。

 地元テレビのKING5でも桜の開花を伝えていた。ワシントン大学の桜名所クアッドは大学ウェブサイトのビデオから開花状況を見ることができる。29本の日本桜が花を咲かせ、キャンパス全体では約100本の桜が植えられているという。

 日本の桜は1912年に米国に初めて寄贈された。当地では1930年代の植樹も多く、日米関係が悪化する中で友好を願ったものもあるだろう。KING5によると、クアッドの桜は1939年にワシントンパーク植物園に植えられ、62年に州道520号の工事で移植されたものだという。

 日米における絆の象徴となってきた。筆者が本紙編集部に在籍していた時でも、スワード公園を中心としたレイクワシントン湖畔、シアトルセンター、ワシントン大学、ジェファーソン公園などが植樹先となってきた。いずれも桜名所だ。このほかにもボランティア公園、インターナショナル・ディストリクトの神戸テラス、リトルサイゴン、ボーイングフィールドに沿って走るエアポートウェイの並木道など。

 市内外に点在する桜名所だけでなく、各自でお気に入りの1本や知られざる並木を見つけるのも一興だ。シアトル交通局のウェブサイトでは各道脇に植えられる木々の情報が公開されており、その中から桜を探すことができる。

 車移動の多かった編集部時代は、この季節になると仕事の合間に道脇に目を向けて桜探しをした。街中に並ぶ桜の木々。歴史を感じさせる太い幹。車を止め、カメラを取り出して写真に収めた。ガーフィールド高校に近いセントラル・ディスリクトにも桜が集まった場所があった。クイーンアンの丘の上にある1本はアスファルトの歩道を盛り上げ、木の根に宿る力を感じさせた。それぞれの樹齢を予測し、歴史やストーリーを探るのも面白い。

 自宅近くには並木道があり、晴天の日に足を向けるのが季節の楽しみになっている。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。