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湧き上がる問題

火曜日午後7時過ぎ。警察車両や救急車両から発せられた警報音が事務所まで響きわたってきた。

インターナショナル・ディストリクト(ID)からほど近く、SODO地区との境目にある場所で発生した銃撃事件。「ジャングル」と呼ばれるフリーウェイ高架の下にあるホームレスの「集落」で発生したものだ。27日早くの報道によると5人が銃撃を受けて、2人が死亡した。銃撃を受けたのは20代から40代と若く、一部報道によれば、犯人と犠牲者は知り合いで、ドラッグや金が原因とされている。

犯人は2人と目されているが、地元テレビKING5によると、黒い服に身を包んだ6人ほどの一団がバイクでやってきたとの目撃もある。銃声は10発以上あったという。

同所はシアトル交通局が所有し、過去にホームレスの退去へ動いたこともあった。KOMOによると、2009年に殺人事件が発生している。

シアトル市のエド・マレー市長は昨年11月にホームレスへの支援対策として緊急事態宣言を発令していた。

都市の発展と比例するように、当地ででは、ホームレスへの課題が顕在化しているようだ。特に近年、IDでのホームレスは数を増しているように感じる。フリーウェイの高架下にはテントが並ぶ。

IDの南端、ディアボーン・ストリートには野外テントの集落「ニッケルズビル」があるなど、シアトル市でも様々な形でホームレスやテント生活者への支援、対策を行っている。だが、ホームレスにも様々あり、そうした組織的、支援のある集落を好まず、今回のように事件の裏にドラッグなどが絡むケースもある。

地元に目を向ければ、ストリートカーがいよいよ開通し、ビジネスへの活気が期待されるID だが、この半年ほどの状況は決して誇れるものではない。犯罪も起きている。日照時間が長くなり、また建設工事などが完了すれば、雰囲気も一変するかもしれないが。

前述のように都市の発展とともに様々な問題が湧き出しているのが現在のシアトルかもしれない。警察側は、何かあれば必ず911に報告するように地元ビジネスに伝えているようだが、個人的にも日々の身の安全を肝に銘じなければならない。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。