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新たな準備

感染病のジカ熱が広がりを見せ、WHOは緊急事態を宣言した。米国ではダラスで発症者があり、蚊を介さず人間から感染したケースも発表されるなど、今後の感性拡大に危機感を募らせている。

一昔前、蚊に刺されることは特に問題視されなかった時代とは大きく異なる。当時はまだインターネットも一般化されておらず、情報はごく限られた時代だったのかもしれない。

新しい情報時代の到来により、様々な発見がもたらさされている。1日発のAP通信によれば、1964年にアラスカで発生した大地震における津波の詳細が明らかにされた。マグニチュード9・2とされ、太平洋岸を襲った津波はカリフォルニア州に至るまで死者を出した。1月に行われたブックイベントの中心となるクレセントシティーでも数十人の犠牲者を出したという。

ワシントンDCでは、将来発生可能性のある大地震への対策を兼ねた会合が開かれた。内務省のサリー・ジュエル長官はシアトルに自宅を構える。昨年に発表された大地震を予測する記事に対し、連邦政府も大きな注目を寄せているという。

内務省によれば、太平洋沿岸部を中心に大地震の発生と揺れの到達を伝えるシステムの開発を進めるという。スマートフォン利用者などにいち早く伝えるもので、日本では東日本大震災でも利用された。地震の多い中国、メキシコ、トルコなどでも導入されている。

揺れに備えて住民に準備を促すほか、公共交通なども停止、徐行などの対策を図り、緊急施設も始動を早めるシステム作りを目指している。米西海岸の研究機関を中心に当地ではワシントン大学の地震研究所が中心となる。政府のみならず、地元企業や有力者も地震からの「減災」を図るため、様々な形で出資するようだ。

東日本大震災から5年がまもなく経つが、地震をはじめ自然災害は、当然のことながら止むことなく世界各地で発生している。数少ない対応手段が、こうした迅速な情報伝達による「減災」への取り組みといえるだろう。

住民の意識も重要だ。記憶が風化しないよう、今も生き続ける社会一同で改めて気を引き締め、できる限りの「準備」を進めておきたい。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。