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国立公園局の助成事業

米国内務省の下部組織となる国立公園局が、第二次世界大戦中の日系人収容所政策に関する史跡保存や記録を目的としたプロジェクトに補助金を提供している。今年は合わせて280万ドルが19のプロジェクトに助成されるという。

 トランプ政権後、内務省の予算減を含めて、このプログラムの存続も危ぶまれた。昨年に発表された2019年度予算案ではこの国立公園局によるプログラム助成金が除かれ、関連団体が予算配分を求めてロビー活動を行ったという。

 この活動を受けてか、17年の160万ドル、18年の130万ドルから今年の補助金額は大幅に増えた。06年に始まったプログラムの補助金総額は3800万ドルを予定し、今年度の発表で2900万ドルに達したという。

 ピュージェット湾地域の日系関係者とつながりのあるアイダホ州ミネドカ、カリフォルニア州ツールレイク、ワイオミング州ハートマウンテンといった各収容所跡地で行われる史跡保存などの事業も進められる。

 ワシントン州では2つのプログラムが助成を受けた。ウィングルーク博物館はシアトル市内インターナショナル・ディストリクト(ID)の南端にある旧移民局の建物を拠点に日系人の足跡をたどるプログラムを立ち上げる。旧移民局の建物は日米による開戦直後、FBIに検挙された地元日系関係者の収容先となった。IDから広がりを見せている日系社会にゆかりある40以上の場所とリンクしながら歴史を学ぶことになる。

 もう一つはスポケーンの公共テレビKSPSによるビデオ制作で、ミネドカ、ハートマウンテンといった収容所や、ワシントン州東部に居を構え新たな生活を始めた日系人の戦後体験を追う。ワ州東部やアイダホ、モンタナといった、当地のように大きなコミュニティがない地域にも、農業などを営む日系人が点在し、そのストーリーは多岐にわたり興味深い。

 政府支援を受ける低所得の移民に対し、ビザ延長や永住権取得を制限する新規則が発表されるなど、トランプ政権の移民政策は厳しさを見せている。米本土に日本から初めて移民が入植して150年。日系移民の歴史は色あせることなく大きな意味を持つ。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。