11月24日と25日、NVCメモリアルホールで、カリフォルニア州ロサンゼルスにある全米日系人博物館(以下、JANM)の出張展示「争われた歴史:アレン・ヘンダーショット・イートン・コレクションの美術品・工芸品」が行われた。今回展示されたのは、第二次世界大戦中、日系人たちが強制収容所内で作った美術品や工芸品、収容所で撮影された写真など約400点。
これらはもともと、アメリカ工芸の専門家で社会活動家としても知られるアレン・ヘンダーショット・イートン氏の所蔵品で、その多くは日本の工芸に興味を持ったイートン氏が収容所を訪れて日系人から無償で譲り受けた品々だった。イートン氏の死後、コレクションは遺族や友人の手に渡り、2015年に大手オークション会社を介して競売にかけられた。これに対し『ニューヨーク・タイムズ』紙が疑問を投げかける記事を掲載。日系人コミュニティーの知るところとなり、競売反対運動に乗り出した。フェイスブック上でも「日系アメリカ人の歴史は非売品!(Japanese American History: Not for Sale! )」というページを立ち上げ、競売差し止めを主張した。最終的には、日系アメリカ人の歴史保存に取り組む非営利組織、ハートマウンテン財団によって競売品が買い上げられ、JANMに保管されることになった。
JANMは2018年に入り、同出張展示を企画。西海岸を中心に各都市を巡回している。シアトルでは、同博物館アートディレクターのクレメント・ハナミ氏によるプレゼンテーションも行われた。ハナミ氏は展示品にまつわる歴史とルーツについて解説し、展示品の持ち主を探した時の様子を収めたビデオも紹介。競売反対運動を主導したナンシー・ウカイ氏が、歴史家のミッチ・ホンマ氏の協力を得て、展示の目玉でもあった木工椅子の持ち主がシアトルに住むシゲ&ヨロズ・ホンマ夫婦であったことを、家族の証言から突き止める場面などがあった。来場者は各展示物を興味深く観賞。数世代の家族が集まって、写真などを指差しながら「これは私の家族のものだったの」などと話す姿も見られた。JANMは巡回展示を通して、アメリカ各地の日系人コミュニティーから展示品についてより多くの情報が寄せられることを期待している。展示品は同博物館のウェブサイトからも閲覧できる。
(窪田進一朗)