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クイーンアン・ヒルのプリーサント墓地で日系人無縁仏を法要

ウェリントン雪崩列車事故死没者慰霊碑の前で法要を行う真言宗僧侶の三上さんと江尻さん

クイーンアン・ヒルにあるプリーサント墓地に、日系移民初期の無縁仏が眠っている。昨年12月24日、カリフォルニア州ベイエリアから二人の真言宗僧侶が同墓地を訪れて、法要を行った。山田洋一郎在シアトル総領事や寿司シェフの加柴司郎さんなど10名ほどの関係者が参列した。

「日本から海を渡り、このアメリカの地で一生を終えた日系人の方々の無縁仏が全米各地にあることを知り、なぜか使命感を感じたんです」と語るのは、観栄(かんえい)の法名で無縁仏を供養して巡る江尻えみさん。シリコンバレーにあるオラクル本社でアジアパシフィック全域のコーポレート・マーケティングを統括する江尻さんは、無縁仏の供養をしたいと7年前に高野山真言宗の寺院で得度をし、そこから修行を積んで僧侶になった。今回の法要に一緒に訪れた三上香楽さんらと共に、弘法大師空海の思想をシリコンバレーのビジネスマンへ伝える英明大学の運営も行う。

江尻さんと三上さんをプリーサント墓地に招いたのは、在シアトル造園家で、昨年に同紙でも紹介したフレンズ・オブ・セコガーデン代表を務める小林 竑一さんだ。自宅近くにあるプリーサント墓地を散策中に日本名を目にしたことをきっかけに、調べると1884年から1911年の間に亡くなった28名の日本人が同墓地に眠っていることがわかった。江尻さんについて友人から知らされ、プリーサント墓地も訪れてほしいと連絡したという。実は江尻さんは、親日家として知られるオラクル共同設立者ラリー・エリソン氏が京都の桂離宮(かつらりきゅう)を模した日本庭園付き邸宅を自宅に建築した際、そのプロジェクトのコーディネートに携わった経験も持つ。「いろいろな縁が重なって、おもしろいものです」と語る小林さんは、ベルビューにある私有日本庭園の存続売却を目指すフレンズ・セコ・ガーデンの活動についても、江尻さんや三上さんのネットワークが助けになるかもしれないと話す。

今回の法要で供養された28名のうち22名は、1910年3月にカスケード山脈のウェリントン(Wellington)で起こった雪崩列車事故に巻き込まれて亡くなっている。レブンワースからシアトルへ向かうグレート・ノーザン鉄道列車が、豪雪でウェリントンに6日間停車した後に、雪崩にのまれた。北米最悪の雪崩事故といわれる惨事で、96名が死亡。被害者の半数以上は鉄道従業員であり、巻き込まれた日系一世の多くも、出稼ぎで鉄道工事に従事していた人々だったことが想像される。22名の御霊を供養する石碑が1930年3月に建立されており、法要はその石碑の前で行われた。おそらく、事故から20年の年月を経て、余裕が生まれた日系人コミュニティーの有志が建立した石碑だろう。

雪崩事故被害者22名の石碑の他に、6基の日系一世のものと思われる墓が見つかり、あわせて供養された。中には、1884年に33歳で亡くなった「Umekichi Tai」との名前が彫られた墓石もある。逆算をすれば1851年江戸時代生まれの人物であり、「移民としてではなく、(漁船の遭難などで意図せずにアメリカ大陸に流れ着いた)漂流民である可能性も高い」と小林さんは話す。

昨年12月24日は、シアトルが久々に大雪のクリスマスを迎えた前日であり、厳しい冷え込みの中での法要になった。参列者は、二人の僧侶の経に耳を傾け、移民や漂流民として厳しい運命を生きた日系一世たちの生死に思いを馳せた。

文=室橋美佐

北米報知社ゼネラル・マネジャー兼北米報知編集長。上智大学経済学部卒業後、ハイテク関連企業の国際マーケティング職を経て2005年からシアトル在住。2016年にワシントン大学都市計画修士を取得し、2017年から現職。シアトルの都市問題や日系・アジア系アメリカ人コミュニティーの話題を中心に執筆。