Home コラム 一石 ワシントン州は長寿州

ワシントン州は長寿州

9月に入り一気に秋、冬の装いとなった。同業関係者がシアトルに出張した際もあいにくの天候。そこで「シアトルは自殺が多い」という言葉が出た。暗く長い冬の時期を指して、筆者もよく耳にした暗い話題ではあるが、そんな中で8月末のシアトル・タイムズ記事が目に留まった。

 シニアケア団体「Senior Living」が全米疾病予防管理センターのデータから出した米国各州の平均寿命。その中でワシントン州の平均寿命は8番目に長い80.2歳だったという。最も長いのはハワイ州で81.3歳、短いのはミシシッピ州で74.7歳となった。ワ州はアルコール関連による肝臓疾患の死因が大幅に増えている一方で、がんと並ぶ大病となる心臓疾患の率が少ないという。アルコール依存に大きく関連する自殺、薬物、肝臓疾患といった死因は全米で大きな上昇が見られるとしている。

 ワ州を見てみると、心臓疾患を死因とするのは全米43番目の多さで、10万人あたりで138.8人。同じくがんは148.4人で35番目、薬物多量接種は15.2人で35番目、肝臓疾患は11.4人で20番目という。

 州内でも地域や郡ごとで住民の肥満度、喫煙率、人口統計、平均所得やヘルスケアの整備と面で差は出る。例えばシアトル・タイムズ紙によると、キング郡のがん死亡率はピアース郡やスノホミッシュ郡よりも低く、州南西部においては全米平均よりも高い数字が出ているという。

 さて、冒頭に戻るが、死因において自殺とされるのは2017年に全米で4万7千人以上。死因では10番目の多さという。ワ州を見ると、10万人あたり19.6人で全米22番目の多さ。地域や季節ごとで分ければ異なるかもしれないが、州ごとの数字では中間あたりとなる。最も高いのはノースウエストの一州でもあるモンタナ州。最も低いのが、ニューヨーク州という。

 最近の統計において、冒頭の話題はイメージ先行ともいえる。一方、数字で示されるアルコール関係の肝臓疾患の死因率の高まりは気になるところ。地ビールの醸造所やワイナリーが次々と増え、同業関係者の間でも話題となり、シアトル出張で楽しみの一つとなっている。健全なたしなみを持ってワシントン州を楽しみたい。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。