知命と閉経、これからの相棒
By 金子倫子
今回のコラムが発行される頃には、私は50歳になっている。この数年はバリバリ更年期と同時にペリメノポーズ(閉経前後の時期)で、自分でも面白くなってしまうくらい、いろいろな症状に見舞われている。10代初めに経験する思春期の逆バージョンだと思って、ある意味達観して自分の変化に向き合っている。
知命の50歳。確かに50年も生きれば、好き嫌いの基準も明確で、服装にしても家の装飾しても、良く言えばうまくまとまっていて、悪く言えば冒険がない。
私がジェモロジスト(宝石学の専門家に与えられる称号)を目指すことにしたのは、「肌身離さず、体の一部の様なダイヤモンド」について書かれたエッセイを読んだことがきっかけで、その哲学は今でも変わっていない。あれこれ買ったり、いくつも身に着けたりではなく、少数気鋭を常時肌身離さず何年も着け続けている。
頻度は高くないが、それでも折々に購入してきたジュエリーたち。長い間50歳を1つの節目と考えていて、この何年か、それを買うためにコツコツと貯めてきた。しかしここ数年の更年期障害の症状とそれにまつわる書物を読むうちに、50歳記念ではなく「閉経記念」にしようと思い始めた。生殖機能が終わりを告げる時、それは生き物としての大きな変化。50歳というきりの良い数字より遥かに重みがある気がするのだ。女性ホルモンに振り回される時期が終わるというのは嬉しい反面、寂しいのも然り。何しろ40年近い付き合いだ。新しい門出を祝うに相応しいジュエリーを迎えたいではないか。
ごく近い未来であるその時に寄り添ってくれる相棒は、間違いなくダイヤモンド。1.5カラット以上のラディアントカットでクラリティはVS2以上。色に関してはD~Zなら特に指定はない。鍛造技術で有名なジュエラーでカスタムメイドして、それを左手中指に。もちろん私は専門家なので、新品中古に限らず、購入する時にダイヤモンドの何をどう確認すれば良いかが分かる。しかし大多数の方はそれを知らないため、高額な買い物をする時には「偽物では?」「騙されてるかも?」という不安が常に付きまとうだろう。
「これが解決法です」とは言えないが、私自身も確認する、ダイヤモンド購入時に最低でも押さえておく要点をいくつかご紹介しよう。
まずは鑑定書や鑑別書があるもの。ただし、メレダイヤと呼ばれる0.2カラット以下のサイズには通常鑑定書はない。よって、ダイヤモンドが敷き詰められたパヴェと呼ばれるセッティングや、小さいダイヤモンドを並べたような物には鑑定書はない。しかし店舗で新品を購入する場合、店によって取り扱うダイヤモンドのグレードが〇〇以上とか、平均的に〇〇という基準があるはずなので、そこは店員に確認をしよう。ティファニーやカルティエ等の多くの一流ブランドや、それに何とコストコも、すべての装飾品に使用されているダイヤモンドの色はIカラー以上、クラリティはVS2以上という基準が設定されているそうだ。
中古の場合、一般的に鑑定・鑑別書などは付いていない。第3者である鑑定機関などに依頼することも出来るが、最低でも100㌦近くかかる(ダイヤモンドの大きさと鑑定額が比例する)ので、あまり高額でない物に鑑定依頼する意味があるのかをまず検討すべきだろう。
一流ブランドの中古品は比較的、購入証明書や鑑定・鑑別書が付いているケースが多い。きちんとした販売者ならば、オンライン・ショッピングでの取引だとしても、信頼性を重視して偽物対策をしている。たとえばアマゾンは偽物を取り締まるチームがあり、2023年度は12億㌦を費やして偽造品対策を取っている。
しかし騙す方もなかなか手強く、イタチごっこはまだまだ続く。例を挙げると、某有名ブランドの「立爪ダイヤモンドリング」とされていてかつ、鑑定機関のダイヤモンドの鑑定書があったとしても、そのダイヤモンドが該当のブランドで購入された物でない事があるという。騙しの手口が上手く組み込まれているらしいのだ。ちょっと込み入った内容なので、詳しくはまた次回へ続く。