〜地球からの贈りもの〜宝石物語〜
By 金子倫子
2025年。読者の皆様、本年もよろしくお願いいたします。
時代の変化に応じて文化やしきたりは変わっていくものだが、それにしても、初詣の参拝にまでそれは及んでいる。お賽銭をQRコードなどの2次元コードを使用し、キャッシュレスで、という時代になった。この際情緒うんぬんの話は別として、神社側にメリットはあるのだそう。たとえばゆうちょ銀行では硬貨を預ける折、101から500枚までだと550円の手数料がかかる。よって膨大な枚数の硬貨を預けると、相当の額の手数料を支払わなければならない。さらに最近は現金を持たない人も増え、小銭ともなれば持ち合わせがない人も多いらしい。そんな事情からも、2次元コードは参拝する側にとっても神社側にとってもメリットがあるのだろう。時代の波には逆らえないということか。
蛇モチーフのジュエリーということで、本連載でブルガリの「セルペンティ」を取り上げた12年前の巳年。このコレクションには、細いゴールドを芯の周りに巻き付けて、金属なのに柔軟性があり、はんだ付け無しのトゥボガス技法を用いて作成した新作デザインが加わった。このトゥボガス技法は1948年に発売された初のセルペンティブレスレット時計にて使用され、ブルガリのアイコンの一つとなった。
セルペンティコレクションよりも前に、しなやかに指や手首に絡みつくこの技法を用いたスネークリングと呼ばれたロングセラーシリーズもあった。蛇の頭の部分に当たるところにペアシェイプのダイヤモンドやピンクトルマリン、ペリドットなどが配されており、指に巻き付くデザインが今のセルペンティに引き継がれている。動物としてのヘビらしさは残っているものの、かなりデフォルメされているので、身に着けやすいデザインになっている。これとは180度異なる趣のデザインが、セドゥットーリという、蛇の頭と顔を模したリング。睨まれたら獲物の蛙の様に動けなくなってしまいそうな眼の部分には、ペアシェイプのルビーやサファイヤなどが使用されており、つい魅入ってしまう。
昨年のブルガリ140周年を記念したハイジュエリーコレクションには、セルペンティを題する3つのネックレスも含まれていた。その中でも最も豪奢なのがエテルナ・セルペンティだ。合計で140カラットの7つのDカラー(最上等級の無色)、ペアシェイプのダイヤが、鱗を彷彿とさせるバゲットカットのダイヤが敷き詰められた体躯部分から垂れ下がっている。首の後ろ側の留め具部分は、蛇頭が尻尾の先を咥えるようなデザインとなっていて、どこから見ても美しく、全方位隙が無い。
テラマーテル・セルペンティは、カボションカットを施された63・86カラットのコロンビア産のエメラルドを中心に、それを蛇が守る如く絡みついている。体躯には無色のラウンドカットのダイヤモンドとバフトップカットのエメラルドで鱗を表している。バフトップカットは、上部がカボションカット(つるりとしたドーム状)で下部がファセットと呼ばれる面があるカット。カボションは色を引き出し、ファセットは光を反射させるので、エメラルドの魅力を最大限に引き出している。
セルペンティ・サファイア・エコーは、蛇の双頭のそれぞれの先に、スリランカ産の各37・34カラットのペアシェイプのサファイアが配されている。この大粒のサファイアの部分は取り外してイヤリングとしても使用可能。もちろん体躯部分はダイヤモンドとサファイアが敷き詰められている。
十二支の中でも、ジュエリーのモチーフとして一般的なのは巳と辰ぐらいだろうか。細長い体躯がデフォルメしやすい事が理由かもしれないが、自らの干支をラッキーアイテムにしたい人には好都合。でも違う干支だからといって落胆することはない。七福神の中で紅一点である弁財天の遣い、または化身とされる白蛇。2025年は1月1日に始まり、以降12日ごとに巡ってくる巳の日は芸能や金運の開運日とされ、昔から銭洗いなどをして金運アップを願ってきた。それに忘れてはならない、蛇の抜け殻もラッキーアイテムの定番だ。
QRコードでお賽銭を寄進する時代。だからこそ巳年の今年、巳の日に蛇に因んだアイテムを身に着け、運気上昇を狙って縁起の良い行動をするのも乙ではないだろうか。